米国の金利が上昇するとドルは買われ、金利のつかない金(ゴールド)は売られ、株も売られ、暗号資産(仮想通貨)は下落する。投資家はそう考える。14日の米国市場は、米10年物国債利回りが上昇したが、金利に敏感なナスダック総合株価指数は2.6%高と大幅反発。ドルは対ユーロで軟調、金は最高値を更新、ビットコインが底堅く推移した。教科書と違う反応。最近は金融市場全体の動きにかかわらず、ドルが軟調に推移する傾向が強まった。主要6通貨(ユーロ、円、英ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)に対するドルの総合的な動きを示すドル指数(DXY)は、2024年10月の水準まで下がった。トランプ氏が勝利した米大統領選後の上昇分を全て消した。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、「トランプ氏の世界新秩序がドルを試す」と題した記事で、トランプ政権の前例のない挑戦でドルが潜在的な犠牲になる可能性があると解説した。関税政策の不確実性で米経済の成長鈍化懸念が高まり、外交政策の大転換で欧州経済の楽観論が浮上、ドルは対ユーロで急落したとしている。ドルの価値下落は米国の輸出に打撃になるほどではないものの、トランプ氏の長年の野望と一致しているため、ウォール街が注目していると伝えた。
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は、16日掲載の英サンデー・タイムズのインタビューで、「インフレを低く抑え、欧州経済の潜在的成長率を高め、欧州連合(EU)を自由貿易の世界のモデルにすることは、準備通貨としてのユーロの役割を強化する」と述べた。ユーロの対ドル相場は、トランプ氏が就任した1月20日時点の1ユーロ=1.02ドル近辺から1.09ドル前後まで大幅上昇。ユーロ・ドルの一段高を予想するアナリストは少なくない。
外国為替市場で「マールアラーゴ合意」が話題になった。米ヘッジファンド会社ハドソン・ベイ・キャピタルのストラテジストで、トランプ政権の大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に指名されたミラン氏は昨年11月の論文で、世界の外貨準備の需要によりドルは割高になっていると指摘、持続的ドル高による経済不均衡を是正するロードマップを描いた。ドル安誘導と借り入れコスト引き下げを目指すトランプ政権の政策課題の一環とみられている。ブルームバーグ通信は、ドル高を是正した1985年の「プラザ合意」と戦後の国際通貨体制の枠組みを定めた「ブレトンウッズ協定」の呼び名は、いずれも舞台となった場所に由来しており、今回はトランプ氏の邸宅にちなみ「マールアラーゴ合意」と呼ばれると伝えた。
米国の歴代政権は強いドル政策を続けてきた。ベッセント米財務長官は「強いドル政策を堅持」と複数回発言しているが、世界の秩序を変えるトランプ大統領が国際金融再編に動く可能性は否定できない。ドル安になれば輸入物価が上がり米国のインフレを招くと予想されるなど障害は少なくないが、トランプ氏の行動は予測不能で、発言は突発的だ。トランプ氏は今月3日、「日本と中国が通貨を下げると、我々に非常に不利益をもたらす」と発言、円が一時急上昇する局面があった。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。