日経QUICKニュース(NQN)=神能淳志
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が実体経済に与える影響が、経済統計に数字として出始めている。財務省が27日発表した2月上旬の貿易統計速報によると輸出入ともに前年から減少した。27日の東京市場では日経平均株価が急落し、長期金利は3カ月ぶりの低水準を付けるなど運用リスク回避姿勢が強まった。新型コロナ感染による物流の停滞で、投資家は一段と慎重になりかねない。
2月上旬の輸出は▼3%、輸入は▼13%
2月上旬の輸出額は前年同期比3.3%減の1兆9771億円だった。減少率は2.6%だった1月の前年同月比に近い水準だ。金融市場では「従来ほどの回復が見込めないことが明らかになった」(大和総研の小林俊介シニアエコノミスト)との声は多い。
減少率は一見すると小幅だが、中国の春節(旧正月)時期という季節要因を考えると、今年2月上旬の輸出は弱さが浮き彫りになる。
大型連休となって物流が鈍る春節の時期によって、毎年1~2月の日本の輸出は大きく変動する。例えば春節が1月下旬だった2017年の2月上旬分の輸出額は、その一年前である16年の春節が2月上旬だったため、前年同期から3割強も増えていた。
今年は春節が1月下旬、19年は2月上旬だったので、同様に前年比で大幅に増加してもおかしくないはずだった。それでも輸出が減少したのは「企業が春節を終えても自主的に中国工場の操業を停止し、稼働率の低下に伴って部品などの供給が停滞したため」(小林氏)とみられる。
輸入も厳しい。2月上旬の輸入額は13.0%減と、1月月間の3.6%減よりも減少率が拡大した。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「新型コロナの影響で物流が停滞した可能性が高い」と話す。
国内でも生産停滞、1~3月期マイナス成長は不可避か
大和総研の試算では、日本企業の中国現地法人の売上高は17年度の実績で約55兆円。現地企業の稼働率が落ち、1四半期の売上高が5%減ったと仮定すると日本からの輸出額は2880億円減る計算になるという。年間の中国向けの輸出額(19年は約14兆7000億円)の2%にあたる規模だ。
大和総研の小林氏は「新型コロナに絡んだ減少率が5%というのは少なく見積もった試算だ」と指摘。そのうえで「輸出減に伴う国内の生産停滞、訪日外国人(インバウンド)需要の減退やイベント中止などの自粛ムードが消費に与える影響も考えると、1~3月期に2四半期連続でマイナス成長となる可能性は高まっている」と話す。新型コロナ感染の影響が具体的な数字として統計にあらわれてくるにつれ、投資家は一段と身構えざるをえなくなる。
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