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下値メドもかすむ日経平均急落、あえて過去の急落局面から探ってみた

12日の日経平均は終値ベースで1万9000円台を割り込み、2017年4月20日以来の安値で取引を終えた。「コロナショック」に見舞われた東京市場は調整色を強めており、底割れの様相を呈している。世界保健機関(WHO)が世界的な流行を意味する「パンデミック」と認定したほか、トランプ米大領領が欧州に対して30日間の渡航制限を行うと表明したことで世界経済への影響が懸念された。投資家のリスク回避姿勢が強まっており反転の兆しは見られないが、過去の急落面と比較して下値のめどを探りたいと思う。

■年1ペースで急落局面を迎えていた「アベノミクス相場」

第2次安倍内閣が発足した2012年末以降、「アベノミクス相場」として堅調な推移を続けてきた日経平均だが、これまでも年1回程度のペースで急落局面を迎えていたことに留意したい。

《アベノミクス相場以降の急落局面》
                         日経平均の直近
時期            事象            高値   安値  下落率 営業日
————————————————————
2013年5月       米金融政策変更  15,627  12,834  -17.9%  25
2014年9月       欧州景気不安    16,321  14,533  -11.0%  18
2015年8月       チャイナショック20,809  16,931  -18.6%  33
2016年1月       中国株急落      19,034  14,953  -21.4%  28
2016年6月       ブレグジッド    17,235  14,952  -13.2%  18
2018年10月      米中貿易摩擦    24,271  19,156  -21.1%  57
2020年2月       コロナショック  23,861  18,560  -22.2%  20

■13年 米量的金融緩和の縮小

アベノミクス相場が最初に躓いたのは13年5月で、このときはバーナンキFRB議長(当時)が量的金融緩和第3弾(12年9月開始のQE3)を縮小するという出口戦略の可能性を示唆したことで金融市場が混乱。投機マネーの逆流が加速し、世界同時株安に陥った。米金融政策の変更への懸念から約1カ月にわたり下落し、この間の下落率は17.9%で所要日数は25営業日だった。

■14年 欧州景気不安、15年 チャイナショック

14年は9月中旬に独国を中心に欧州の景気不安が台頭したほか、エボラ血熱の蔓延なども重なり世界同時株安に見舞われた。15年夏のチャイナショックでは、人民元の大幅な切り下げなどを背景に上海総合指数が急落し、世界同時株安を招いた。日経平均の下落率は18.6%に達し、所要日数は33日にも及んだ。

■16年 中国株急落、ブレグジッド

16年は年初に中国12月非製造業PMIが市場予想を大きく下回ったことで中国景気減速懸念が再燃し、人民元の下落でその懸念が強まった。中国株式市場は導入したばかりのサーキットブレーカーが連発して混乱を来したほか、原油価格の急落でオイルマネーによる世界的な売りも相場に影を落とした。国内では日銀によるマイナス金利の導入が裏目に出る形となった。日経平均の下落率は18.6%に達し、その間の所要日数は28日だった。その後は、原油価格が底入れ反転するに連れてマーケットは次第に沈静化し、金融不安が懸念されたドイツ銀行がココ債の買い戻しを表明したことも安心感を与えた。さらに、6月24日は想定外のブレグジットの影響で日経平均は歴代8位の下げ幅(同9位の下落率)を記録。世界同時株安に陥った。

■18年 米中貿易摩擦

18年はペンス米副大統領が10月4日にワシントンのハドソン研究所で行った講演で、貿易など経済に限らず安全保障分野でも、中国に断固として立ち向かうと述べた。これが「対中国の全面戦争」の宣戦布告と受け止められ、その後に米中貿易摩擦が深刻化するきっかけとなった。その後、利上げを続けるパウエルFRB議長と、トランプ米大統領が金融政策を巡って対立色を強めたことを受けて、年末にかけて世界同時株安に見舞われた。
《参考》
                         日経平均の直近
時期            事象            高値   安値  下落率 営業日
————————————————————
2000年4月       ITバブル崩壊    20,833  16,008  -23.2%  29
2008年9月       リーマンショック13,073  7,163   -45.2%  38
2011年3月       東日本大震災    10,590  8,605   -18.7%  4

■現実的な下値メドは「1万6900円程度」?

アベノミクス相場以降の急落局面は、日経平均の下落率が20%程度、日柄的に25営業日程度で底入れとなっている。今回のコロナショックは下落率が22%、20営業日に達しており、これまでの事象を参考にするといつ反発しても不思議ではない水準まで来ている。ただ、リーマンショック級の事態に陥れば、さらに倍以上の下落および日柄調整が続く可能性もあることに留意したい。仮にリーマンショック直後の下落率45%を、今回の日経平均に当てはめると1万3300円程度になる。そこまでの下落は考えにくいため、現実的にはリーマンショック後の最低PBR0.81倍を基準とした1万6900円程度が現実的な下値メドと意識されるのではないか。

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著者名

QUICK Market Eyes 本吉 亮


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