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世銀「パンデミック債」初の元本取り崩しへ 新型コロナ、途上国に感染症対策支援

NQNロンドン=椎名遥香

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界銀行が発行した「パンデミック債」の元本が取り崩される可能性が高まってきた。投資家に高い利回りを約束する一方、パンデミック発生と認定された場合には元本を取り崩し、途上国での感染症対策に充てられる仕組みとなっている。資金支援を認めるにはいくつもの条件があり、対策に振り向けられるのは早くても3月下旬になるとみられている。

2タイプで満期7月、債券価格は下落

パンデミック債は2017年に発行された。リスクに応じて2つのタイプに分かれている。タイプAは、相対的にリスクが低いもので、利回りは6カ月物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)プラス6.5%、発行額は2億2500万ドル。タイプBはよりリスクが高く、利回りは6カ月LIBORプラス11.1%、発行額は9500万ドルだ。A、Bいずれも償還は20年7月。満期が目前に迫るが、取り崩しリスクの織り込みが進み債券価格は下落している。10日付のフィナンシャル・タイムズによると、Bは額面1ドルあたり平均2セント、Aは平均87セントで取引されている。

17年の発行以来、元本が取り崩されたことは一度もないが、今回の新型コロナ感染については条件がそろいつつある。途上国への資金提供を認めるには多くのトリガー条項をクリアする必要があり、世界保健機関(WHO)が感染症の拡大を「パンデミック」と認めたからといってすぐに元本が毀損するわけではない。

資金提供の開始へ残る2条件

パンデミック債の目論見書によると、元本取り崩しの条件となる死者数はBが250人、Aは2500人となっている。死者数や感染国の数については基準に達してしまった。世界銀行は日経QUICKニュースの取材に対し「(途上国への)支払いには、あと2つの条件が満たされる必要がある」と述べた。

1つは、感染が最初に確認された日から12週間が経過すること。WHOへ最初に報告のあった19年末から数えると12週間後にあたるのは3月23日だ。2つ目が、一定のスピードで感染が広がっていることの確認で、23日以降に独立した機関が感染の増加率を計算することになっている。

増加率の計算に時間がかかれば、条件が全て満たされたかどうかの判断が4月以降にずれ込む可能性もある。迅速な資金支援を目的としているはずが、対応が遅すぎるとの批判も聞かれる。

※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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NQNロンドン=椎名 遥香


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