日経QUICKニュース(NQN)=矢内純一
トルコリラの下落が止まらない。新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場の動揺でドル需要が強まり、新興国通貨への売り圧力が高まっている。トルコリラも例外ではなく、2018年夏の「トルコ・ショック」以来の安値に沈む。トルコ中央銀行が17日に7会合連続の利下げに踏み切ったのもリラ売りを促した。経済的に結びつきが強い欧州経済の不透明感も強まり、リラは下値不安が消えない。
株価も2月から3割下落
リラの対円相場は16日に1リラ=16円台半ばまで下落し18年8月以来の安値を付けた。投資家のリスク回避の動きが相場を押し下げている。同国の代表的な株価指数であるBIST100も2月以降、3割近い下落となっている。
トルコ中銀は17日、米連邦準備理事会(FRB)や日銀などと同じく金融政策の決定会合を前倒しで開き追加緩和を決め、主要な政策金利の1週間物レポ金利は1%引き下げて9.75%とした。トルコの2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で12.37%上昇だった。政策金利と物価実績を単純に比べると、「実質金利」は一段とマイナスを深掘りしたことになる。
経常赤字国、痛い観光の落ち込み
トルコでもコロナの感染は広がっており、一部の飲食店などが営業停止になるなど経済活動が停滞している。同国は恒常的に経常赤字国で外貨収入への依存度が大きい。野村証券の中島将行・外国為替エコノミストは「欧州でも移動制限が始まっており、観光業収入の落ち込みが懸念される」と指摘する。
欧州経済研究センター(ZEW)が17日に発表した3月のドイツ景気予測指数は大幅に悪化している。欧州経済の不透明感の高まりは、トルコ経済に影を落とす。
18年夏のトルコショックでは、リラの急落で同国向けの債権が多い欧州金融機関の経営に悪影響が及ぶとの懸念が世界的な株安につながった。新型コロナの影響が、トルコのような新興国の通貨危機を再び招くとの警戒も怠れない状況だろう。
※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。