NQNニューヨーク=岩本貴子
投資家の安全志向は強まるばかりだ。25日の米短期金融市場で3カ月物の米財務省証券(TB)の利回りがマイナスになった。景気回復の時期が見極めにくいうえ、米連邦準備理事会(FRB)による大量の資金供給にもかかわらず流動性への懸念も根強い。相対的に安全な資産とされる米国債であっても、選好されるのは「準現金」に限られている。
■4年半ぶりのマイナス圏
電子取引のトレードウェブによると、3カ月物の米財務省証券(TB)の利回りは25日午前に一時マイナス0.03%程度まで低下した。マイナスは2015年10月以来4年半ぶりだ。「景気の先行懸念を強める市場参加者が現金の代わりとして買っている」(アクション・エコノミクスのキム・ルパート氏)。満期までの期間が短いTBは、流動性の高さもあって投資家の資金の逃避先としての存在感を高めている。

※3カ月物の米TBはマイナス利回りに
短期的に景気が急速に悪化するとの懸念が相対的に流動性に劣る長期債などへの買い手控えを誘っている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け米国の主要な州では不要不急の外出禁止が広がっている。各国は渡航の制限を強め、世界的に経済活動の収縮が鮮明だ。バンク・オブ・アメリカは、2020年4~6月期に米国で350万人の職が失われるとの見通しを示した。
米政権と与野党の議会指導部は25日未明に2兆ドルの経済対策で合意したが、景気回復の姿はなお不透明だ。セントルイス連銀のブラード総裁は25日の米CNBCのインタビューで「米経済は短期的に大きな影響を受けるが、力強く戻るだろう」と述べた。経済対策に加え、FRBによる巨額の資金供給が寄与すると見込む。
■回復軌道はU字?
一方、「回復の軌道はV字型よりもU字型に近い」(オックスフォード・エコノミクスのジョン・キャナバン氏)との指摘も出ている。QUICK・ファクトセットがまとめた20年の米国の成長率見通しは中心値で0.50%だが、マイナス3.50~1.90%と見方は大きく分かれており市場参加者の気迷いが透ける。
疫病による景気後退という未曽有の事態を受け、急速な事態の悪化に備え手元の流動性を高めようという傾向はFRBによる資金供給を受けても弱まる兆しは乏しい。26日発表の週間の新規失業保険申請件数は前週の28万件から250万件に急増するとの予想も出ている。先行きの不安が尽きない市場参加者による安全志向は当面続きそうだ。