QUICK Market Eyes=大野弘貴、丹下智博
108兆円規模の緊急経済対策と緊急事態宣言の発令に注目が集まる。政府は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する第3弾の緊急経済対策を閣議決定する。約108兆円の事業規模は過去最大となり、名目国内総生産(GDP)の約2割に上る巨額なものだ。緊急事態宣言は7日にも発令される見通しとなっている。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で期間は5月6日までとする方針が伝わっている。
■経済対策はリスクシナリオを上回る規模
JPモルガン証券は6日付リポートで「緊急事態宣言の対象となる7都府県の国内GDPに占める割合は45.6%となり、これまで取り沙汰されていた首都圏封鎖のリスクシナリオ(33.1%)よりも大きい」と指摘。一方で、「安倍首相はこれが封鎖であることを否定しており、また日本では、ユーロ圏や米国と比べて、人々が罰を受けて外出することを法的に制限することができず、小売業者や金融機関のような一部の産業が通常通りに活動するという点で、規制はより緩やかであると言える」との見方を示した。それでも、「日本の成長見通しを下方修正する可能性が高い」とした。108兆円規模の経済対策も併せて今日発表される詳細を確認し、「実体経済への影響を見極めたい」としている。
モルガン・スタンレーMUFG証券も緊急事態宣言の対象となる7都府県は日本のGDPの約5割が含まれることになると指摘した上で、「この範囲は、我々の当初想定よりも広い。また期間も1カ月程度と想定より若干長い」との印象を示した上で、「3四半期連続マイナス成長となる4~6月期の実質GDPの下落幅は、現在の予想(前期比年率換算マイナス3.3%)よりも拡大するリスクがある」との見方を示した。
■非ロックダウン
一方、中国や欧州のような厳格なロックダウンではないことから、「欧州や米国などの4~6月期マイナス30%を超えるような急激な落ち込みは現時点では考えにくい」とも指摘。「金融事態宣言の対象地域において、必需品以外の消費がゼロになるという見方は極端に見える」との見方も示されている。108兆円規模の経済対策について、モルガンMUFGは「事業規模108兆円(GDP比約2割)と大きいが、民間支出を含むため割り引いてみる必要がある」と指摘。「COVID-19の感染拡大が続く中で、短期的な景気押し上げ効果は、公共事業の前倒し執行以外は限定的に見える」との見方も示されている。
今回の大規模な経済対策は国債の発行により財源の一部を手当てする。市場からは「さきほど報じられた16.8兆円の国債追加発行は、リーマン・ショック時の経済対策に伴う追加発行とほぼ同額。サプライズではないだろう」(ストラテジスト)との指摘があった。