QUICK Market Eyes=片平正二
21日の米国市場でWTI原油に連動する上場投資商品(ETP)のユナイテッドステーツ・オイル・ファンド(コード:USO)に大規模な資金が連日で流入した。QUICK FactSet Workstationによれば9億237万ドルの資金流入となり、1週間で26億ドル超、1カ月で44億ドル超の流入を記録した。
この日の米国市場でUSOは大幅に8日続落し、25.06%安の2.81ドルで終えた。一時は2.31ドルまで下げて2006年に設定されて以来の安値を更新した。WTI原油先物相場では、20日に期近の5月限の価格が史上初めてマイナスに突入。21日もWTI原油先物が急落する中で個人投資家の押し目買い意欲が強いもようだ。
■原油クラッシュでETF償還
先物価格が大幅なマイナス圏に沈むといった異常事態は他の原油関連の上場商品にも大きな影響を与えている。WTI5月限のマイナスを受けて、iPathシリーズB GSCI原油トータルリターンインデックスETN(コード:OIL)を運用するバークレイズは20日、OILの全額を償還すると発表。20日をもって販売・発行を停止することも発表し、WTI5月限が急落したことを受けて期先へのロールオーバーを行った場合、リターン悪化が避けられないと判断したとみられた。
■6月物次第では・・・
一方、USOの投資対象は21日時点でWTI6月限、7月限、ICEのWTI原油先物6月限、7月限を投資対象としている。現月交代の2週間前に期先にロールオーバーする方針だといい、5月限がマイナスになったことによる早期償還リスクは避けられていた。
著名金融ブログのゼロ・ヘッジが21日に伝えたところによれば、USOはWTIの一部を8月限にしたほか、市場の状況によっては利用可能な任意の限月に投資するという。WTI6月限が40%、7月限は55%といい、既に中心限月の6月限よりも7月限のウエイトを高めているとのこと。ある外資系証券のトレーダーによると、USOの動向が外国人投資家の間でも話題になっているという。早期償還が続くようだと投資家心理を一段と冷え込ませかねない。
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