日経QUICKニュース(NQN)=長田善行
基準価格がマイナスとなったら早期償還――。米原油先物相場の急変を受け、野村アセットマネジメントは運用する原油価格指数連動型上場投資信託(ETF)の情報開示を前週以降、強化している。原油相場の反転による価格の上昇を期待した逆張り志向の個人投資家が集中するなか、商品特性について十分な理解を求めるのが狙いだ。
■ETFの中身、開示します
野村アセットはホームページで、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場する指標油種のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)と野村原油(1699)に関して「重要なお知らせ」を掲載している。商品特性についてのQ&Aをまとめたページに簡単にたどり着けるようになっている。
そこではETFが早期償還される条件について、目論見書の記載内容を引用し、ETFに組み入れた先物評価額が「マイナスとなった場合、ファンドの基準価格がゼロもしくはマイナスになることもあり得る」とし、その場合「早期償還がファンドの受益者に有利であると判断されるケースに該当する可能性がある」と示している。
野村原油が保有する資産については同社だけでなく、東京証券取引所がETFの現在値やインディカティブNAV(1口あたりの推定価値)についての情報を提供する専門サイトで確認することも可能だ。
すでにWTIの期近6月物を全て処分しており、7月物と8月物、12月物といった期先物を保有している。「可能性は小さくても、早期償還のリスクを避けるのが目的」(野村アセット)という。
米原油先物市場は20日、当時の期近物(5月物)が史上初めてマイナス価格を付けた。同先物は差金決済ではなく、現物の原油の受け渡しが必要となるルールだ。米国の原油在庫が積み上がるなか、最終決済日を前に投機筋による損失覚悟の投げ売りが膨らんだとの見方が多い。
期先物のマイナス価格化は現時点では可能性が低いとみられているが、それでも野村原油では、早期償還の回避が最大の投資家保護とし、期先物を分散保有することとしている。
■米国ではUSOに関心
米国でも、原油先物で運用するETFのユナイテッド・ステーツ・オイル・ファンド(USO)の運用会社が27日、現在の期近物となる6月物を全て売却したことを明らかにした。
期先物中心の運用は原油相場が反発した際のETFの「感応度」を低くしてしまう。期近物が期先物よりも安い「コンタンゴ(順ざや)」の状況下では期先物への乗り換え自体にも一定のコストが発生し、その影響は投資家に及ぶ。
原油相場との連動性を高めれば、早期償還の可能性が高まり、早期償還を回避しようとすれば連動性が下がる――。米原油先物相場の異常事態は原油ETFの構造的なジレンマを浮き彫りにした。
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