日本の投資家による外国債券への投資が再び活発化してきた。日銀の金融緩和策で超低金利の環境が今後も見込まれるなか、より高い利ざやを求めて相対的に利回りの高い外債に資金を振り向けている。マジックナンバーは利回り「1%」だ。
■外債への短期売買が活発化か
財務省が6月18日発表した対外及び対内証券売買契約などの状況(週間、指定報告機関ベース)によると、国内勢は6月7~13日に、米国債など海外の中長期債を1兆6566億円買い越した。5月31日~6月6日(1兆678億円)に続き2週連続の大幅な買い越しで、直近の買越額は3月1~7日(4兆1694億円)以来の大きさ。現状、今年度最高の水準だ。
中長期債の買いと売りの合計金額は23兆3847億円と、3月22~28日以来およそ2カ月半ぶりの水準に膨らんだ。6月初旬に米10年債利回りが1%近辺に上昇したことをきっかけに「国内勢の外債への短期売買が活発化したのでは」(岡三証券の鈴木誠氏)との見方があった。
5月の米雇用統計で景気回復期待から米国債が売られ、10年債利回りは6月5日に一時0.95%と3月20日以来、2カ月半ぶりの水準に上昇した。6月7~13日の週は米連邦準備理事会(FRB)がゼロ金利政策の維持を決めたことで0.7~0.8%近辺で推移したものの「米金利が1%近辺の際に買えなかった投資家の積極的な押し目買いの局面となった」(SMBC日興証券の山崎祐司氏)という。
■買いに動いたのは…
買いを入れた国内勢は誰か。投資家部門別対外証券投資によると、メガバンクなどの銀行等(銀行勘定)は、金利が上昇した3月には5兆5000億円を買い越している。その後は4月と5月に海外の中長期債を計4兆5000億円売り越した。3月と同様に金利が上昇した局面を見逃さず、銀行が利ざやを求めて買い増しに動いたと見る市場関係者は多い。
低いヘッジコストが続いたことで、銀行以外の投資家も買いに動いたとの観測がある。ドルと円の取引(3カ月物)のヘッジコストは3月の2%台半ばから直近で0.5~0.6%近辺に下がり、米債に投資しても利ざやを得られる環境が続いている。市場では「ヘッジ付き外債への投資が多い生命保険会社もすかさず買いを入れた」(国内証券の債券ストラテジスト)との見方があった。
国内の中長期債は日銀の国債買い入れオペ(公開市場操作)の手厚いゾーン(年限帯)であるほか、日銀の「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」に関連した担保需要も出ており、金利が上がりにくい状況は今後も続く可能性が高い。利ざやを求めた国内勢の外債投資は当面続く可能性がある。〔日経QUICKニュース(NQN)松井聡〕