新型コロナウイルス感染症のまん延による「巣ごもり」で個人の取引が拡大しているのは株式だけではない。外国為替証拠金取引(FX)を手掛ける国内の個人投資家「ミセスワタナベ」は、オーストラリア(豪)ドルを活発に売買している。FX取引の主要な通貨ペアである「ドル・円」は相場が膠着(こうちゃく)しており、ミセスワタナベの視線は動きのある通貨へと向かっている。
■活発な豪ドル取引
「いま一番、盛り上がっているのは豪ドル」。セントラル短資FXの水町淳彦氏はこう話す。3月中旬に1豪ドル=59円台に下落した豪ドルの対円相場は今月8日、76円台まで約3割上昇し、およそ1年ぶりの高値を付けた。
QUICKが22日に公表した19日時点の店頭FX8社合計の「豪ドル・円」取引の建玉(売り買い合計)は、19万2665枚(枚は1万通貨単位)と2週連続で増加した。相場の上昇過程にあった5月に20万枚まで膨らんだ建玉は今月上旬に一時18万枚を割り込んだが、再び増加基調に転じている。
「機関投資家に比べ、個人投資家は上昇基調にある国の通貨を安心して取引する傾向が強い」(ワイジェイFXの遠藤寿保氏)といい、豪ドルは日本の個人をひき付けている。オーストラリアへの人気は通貨だけでなく、不動産投資信託(REIT)の「上場インデックスファンド豪州リート(S&P/ASX200 A―REIT)」なども買いを集めている。
■大きな値動きに好感
「相場の動きが大きいのも、ミセスワタナベにとっては魅力」(セ短資FXの水町氏)だ。豪ドルは今月8日に高値を付けた後、73円台まで調整している。押し目買いのチャンスとみた「逆張り」投資家の買いも巻き込んだようだ。
日米の金利差縮小などにより、円の対ドル相場の動きは日増しに乏しくなっている。FXで「ドル円」は取引全体の6~7割を占める主要な通貨ペアで、ここが動かないと全体として商いが盛り上がりにくい。「個人は値動きの大きい通貨ペアに流れている」(マネーパートナーズの武市佳史氏)といい、当面は豪ドルなど変動率の大きな通貨にミセスワタナベの関心は向かいそうだ。〔日経QUICKニュース(NQN)西野瑞希〕