ニューヨーク市場で金先物相場が再び上昇している。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた米国経済は回復の途上にある。「安全資産」である金は景気回復期には逆行して下落することも多いが、今は共存して買われている。金の買いを後押しているのが低金利だ。
■金、最高値も視野に
6月22日のニューヨーク金先物相場は取引の中心である8月物が前週末比0.8%高の1トロイオンス1766.4ドルで終えた。4月14日に付けた7年半ぶりの高値となる1788.8ドルに接近し、2011年9月の最高値(1923ドル)も視野に入りつつある。
米シカゴ連邦準備銀行が22日に発表した5月の全米活動指数は前の月から急回復した。今月に入り、米経済の持ち直しを示す経済統計の発表が相次ぐ。景気回復が逆風になるはずの金相場が強さを維持するのはなぜか。
■低金利とドルの先安観
ゴールドマン・サックスは19日付リポートで低金利とドルの先安観が金相場を支えていると指摘。今後1年以内に1トロイオンス2000ドルまでの上昇を予想する。
米長期金利は4月以降、0.6~0.8%の低い水準での動きが続いており、米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和の長期化により今後も低位安定が見込まれている。FRBは社債も買い入れている。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、投資適格とされる「BBB」以上の米企業の社債で構成する指数は18日、利回りが2.23%と過去最低を更新したという。「過去最低の社債金利も相対的な金の魅力を高めている」(エバコアISIのデニス・デバッシャー氏)との声がある。
金はドルの「代替通貨」と位置づけられることもある。そのドルの先安観が広がっているのも金買いにつながっている。ドルの総合的な価値を示すインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は22日、一時97ちょうどまで下落した。3月に103まで上昇した背景であるドル逼迫への懸念は和らぎつつある。
15~19日の週のFRBのバランスシート規模は7兆946億ドルと新型コロナ対応の金融緩和に踏み切った3月以降、初めて週間で減少した。海外中銀へのスワップ協定によるドル供給やFRBの金融調節を担うニューヨーク連銀のレポ取引の減少が主因だ。これは逼迫感の解消を示唆しており、今後のドル安観測を強めている。
バンク・オブ・アメリカは4月時点で21年9月までに金相場が最大で1トロイオンス3000ドルまで上昇すると予想していた。景気回復にもかかわらず上昇する金だが、新型コロナの感染「第2波」が経済活動を再び抑制するとの懸念も買いを誘っている。リスク回避の買いも巻き込み、持続的な価格上昇を見込む参加者が増えている。(NQNニューヨーク 張間正義)