コロナショック後の戻り相場で、ひときわ上昇が目立つ米ナスダック総合株価指数。国内の投資信託もナスダック関連は3月下旬以降のパフォーマンスが好調で、資金流入が増えているファンドもある。
■ナスダック指数、コロナショック後に急回復
ナスダック総合はハイテク企業を中心とした2500銘柄以上の時価総額加重平均から算出する代表的な米株価指数の一つ。今月10日に初めて終値で1万台に乗せた。ナスダック市場に上場している時価総額上位には、アップルやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなど世界的なIT(情報技術)企業が並ぶ。
同じく米国の主要な株価指数であるダウ工業株30種平均やS&P500種株価指数(配当込み)などと比べてみると、ナスダック総合はコロナショックからの回復ペースが早い(図1)。ハイテク企業は対面のサービス企業や製造業などと違い、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けにくいとして買われている。
■「iFreeレバレッジ」の運用好調
国内公募の追加型株式投資信託(ETF除く)のうち、ナスダック関連のファンドには大きく分けて3つのタイプがある。①ナスダック上場銘柄の中から投資対象を選ぶアクティブ型と、②ナスダック市場の時価総額上位100銘柄で構成するナスダック100株価指数などの指数に連動するインデックス型、③ナスダック100指数の数倍の値動きを目指すブル・ベア型(レバレッジ・インバース型)だ。
ナスダック関連投信は合わせて10本あり、図2にそれらを設定日順に並べた。特にパフォーマンスがいいのは、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」(0431218A)。6月26日時点の年初来リターン(分配金再投資ベース)が22.9%、ナスダック総合が年初来最安値をつけた3月23日を始点とした戻り局面のリターン(同)が102.6%と、どちらも10本中最高だった。
このファンドはナスダック100指数(米ドルベース)の2倍程度の値動きを目指すレバレッジ型。年初来の資金流入額(6月26日時点の推計値)は80億円を超え、断トツの人気を集めている。昨年末時点で8億円しかなかった純資産総額(残高)は、6月26日時点で106億円に膨らんだ。
■「アクティブ型」も健闘
年初来リターン2位は「米国NASDAQオープンAコース」(0131100B)の22.5%だった。ナスダック上場企業のうち、成長性、収益性、安全性などから銘柄を選定するアクティブ型で、最新の月次レポート(5月29日時点)では50銘柄に投資している。組み入れ1位がマイクロソフト、2位がアマゾン・ドット・コム、3位がフェイスブックだった。
3月23日以降のリターンでは、ナスダック100指数(円ベース)の2倍程度の値動きを目指す「T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルブル7)」(10315203)が64.0%で2位だった。一方、同指数と逆方向に2倍程度の値動きを目指す「T&Dダブルブル・ベア・シリーズ7(ナスダック100・ダブルベア7)」(10316203)はマイナス40.8%に落ち込んでいる。(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)
<金融用語>
金融商品取引所に上場している指数連動型投資信託(ETF)のうち、日経平均株価などベンチマークとなる株価指数の値動き自体に連動するのではなく、株価指数の日々の値動きを2倍や3倍などに増幅した値動きに連動した運用を行う投資信託。 株式先物を活用して運用するのが一般的であり、日々、短期金融商品(短期金融資産)を証拠金として組み入れ、運用資産額の2倍や3倍の先物を買い建てるのが運用の基本形。仮に倍率を2倍とすると、2倍となるのは日々のリターン(変動率)であり、前営業日と比べた当日のレバレッジ型ETFのリターンが株価指数のリターンの2倍となるよう運用を行う。そのため、一年間など投資期間を広げるとレバレッジ型ETFのリターンは株価指数のリターンを2倍した値とのズレが拡大していく。さらに、株式相場が膠着し株価指数自体はほぼ変わらずリターンが小幅プラスだったとしても、同期間のレバレッジ型ETFのリターンは最終的にマイナスになるケースもあり得る。 こうした特性を踏まえ、一般的なETFはその低い運用コストから長期保有でメリットが顕在化するのに対し、レバレッジ型ETFは長期保有に向かず、相場観に基づいた短期投資向けのETFとして位置づけられている。 レバレッジ型ETFの市場価格は投資対象の先物の値動きにも左右され、株式相場が急変すると株価指数先物がストップ高やストップ安となり、株価指数のリターンの2倍に対応する価格からかけ離れた値段が付くこともある。 ベンチマークとなる株価指数とは反対方向に動き、利益・損失の関係が日々逆になる「インバース型上場投資信託」とセットで上場しているのが一般的である。