野村証券が3日から「野村ではじめるESG投資応援キャンペーン」を開始した。対象の投資信託を積み立て方式で買うと、2025年末まで毎月の購入手数料(買付金額合計50万円まで)の相当額がキャッシュバックされる。対象の11本はSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する投資方針のファンドを厳選した(図1)。すべて主に先進国の株式で運用するタイプで、購入手数料は3.3%(税込み・目論見書記載の上限)。
「ESG(環境、社会、企業統治)」は世界から注目を集める投資テーマで、欧米ではESGを基準にした銘柄選びが定着している。日本でも機関投資家などを中心にESGを投資判断の要素として組み込む働きかけが進み、このところ個人投資家の関心も高まっている。
■対象11本、医療関連ファンドが残高上位
対象の投信11本のうち、6月末時点の純資産総額(残高)が最も大きいのは「野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース 為替ヘッジなし 資産成長型」の712億円。残高2位は同ファンドの「Aコース」で380億円だった。世界の医療関連株式のうち、先進的な技術の発見・開発や医療サービスの提供に寄与する企業に投資する。
最新の月次レポート(6月30日時点)では、約9割が米国への投資だった。組み入れ銘柄数は43で、首位は米医療保険大手のユナイテッドヘルス・グループ(UNH)、2位は新型コロナウイルス感染症の治療薬として日本の厚生労働省が認定した抗炎症薬「デキサメタゾン」を製造する米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMY)だった。
■短期リターンは「エコディスカバリー」が首位
対象ファンドのうち、1年リターン(6月末時点、分配金再投資ベース)が最も高かったのは「ピクテ・エコディスカバリー・アロケーション・ファンド(年2回決算型)為替ヘッジなし<愛称:エコディスカバリー>」のプラス16.8%だった。僅差で2位となったのは同ファンドの「為替ヘッジあり」で16.7%のプラス。世界の環境関連企業の株式に広く投資する。
最新の月次レポート(6月30日時点)では米国への投資が約5割を占め、「エネルギー効率化」、「再生可能エネルギー」、「省資源化」の3つをテーマに投資先を選んでいる。組み入れ銘柄数は56。イタリア最大の電力会社で再生可能エネルギーや電気自動車(EV)向け充電設備に取り組むイタリア電力公社(エネル、ENEL)や再生エネルギー主体のスペイン電力大手イベルドローラ(IBE)、風力・太陽光発電最大手の米ネクステラ・エナジー(NEE)などが組み入れ上位に並んだ。
為替ヘッジなしのコースに絞って年初からの値動きを比較すると、「エコディスカバリー」と「野村ACI先進医療インパクト投資」の運用成績が、「先進国株式型」(QUICK独自の分類)の平均と比較しても好調だった(図2)。
■長期では「水関連」が好成績
長期の運用成績で見ると、10年リターンの首位は「ワールド・ウォーター・ファンド Bコース」で194.1%のプラス。2位は「野村アクア投資 Bコース」のプラス173.2%だった。運用実績が10年を超すファンドが限られるため全部を横並びでは比較できないが、長期では水関連投信の為替ヘッジなしコースの運用が好調だった。
個別ファンドの積み立て投資の成果は、日経電子版の投資信託欄でも確認できる(個別ファンドのページにある「運用成績」タブの「積立/一括購入比較」を参照)。「ワールド・ウォーターB」を例にとると、10年間で合計100万円を積み立てた場合、61万円超の評価益が出た(6月末時点)。
「ワールド・ウォーター・ファンド」は世界の水関連企業に加え、空気関連企業の株式にも投資する。最新の月次レポート(6月30日時点)では5割強が米国への投資で、組み入れ銘柄数は51。産業機械大手のダナハー(DHR)や上下水道ビジネスを手掛けるアメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)、分析機器大手のサーモフィッシャー・サイエンティフィック(TMO)などを上位に組み入れている。
「野村アクア投資」は世界の水関連企業を投資対象とする。最新の月次レポート(6月30日時点)では、米国への投資割合が約4割、組み入れ銘柄数は66だった。組み入れ上位は、計量機器を手掛ける米アジレント・テクノロジーズ(A)やフランスの水関連サービス会社のスエズ(SEV)など。
■新規設定の「ザ・サーキュラー」も対象に
キャンペーン対象のうち「野村ブラックロック循環経済関連株投信(愛称:ザ・サーキュラー)」は、これから設定されるファンド。野村アセットマネジメントが8月24日に運用を開始する。投資対象は世界の株式のうち、持続的に再生し続けられる経済循環(サーキュラーエコノミー)に関連する銘柄。ファンダメンタル分析やESGへの取り組みなどから30~60銘柄に投資先を絞り込む。米ドル売り・円買いの為替取引をする「Aコース」と為替ヘッジをしない「Bコース」の2本がある。
商品説明資料(5月29日時点)によると、マザーファンドである「ブラックロック・グローバル・ファンズ-サーキュラー・エコノミー・ファンド」は大型銘柄が約6割。国・地域別配分比率では欧州が55.9%、米国が36.0%と続く。
組み入れ銘柄数は42。組み入れ上位には、米総合板紙メーカーのグラフィック・パッケージング・ホールディングス(GPK)やオランダの医療技術会社コーニンクレッカ・フィリップス(PHIA)、飲料用アルミニウム缶製造企業の米ボール(BLL)が挙がった。今回のキャンペーン対象は積み立て方式のみだが、設定時点でどれくらい資金が集まるかにも関心が集まりそうだ。(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)