米大統領選まで3カ月を切り、関心が一段と高まったようだ。テレビ、ラジオ、新聞で大統領選に関する報道が圧倒的に増えた。政治宣伝も目立って増加しテレビ広告やソーシャル・メディアの動画メッセージを頻繁に目にする。伝統的に民主党が圧倒的に優勢なカリフォルニア州で「増えた」と感じるほどなので、激戦州でどれほど政治宣言が多いかを想像するのは難しくない。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙とNBCニュースが16日発表した最新の世論調査では、民主党候補に確定したバイデン前副大統領の支持率が50%と、トランプ大統領の41%を上回った。1カ月前の調査での差は11ポイントで同じ傾向が継続していることを示した。
興味深いのはバイデン氏を支持した理由だ。バイデン氏の人物や政策と答えた有権者は36%にすぎず、トランプ氏を支持しないからと答えた人が58%にのぼった。11月3日の大統領選はトランプ氏の信任投票の意味合いが強いと示唆している。調査に参加した人の79%が選挙に関心があると答え、トランプ氏の新型コロナウイルス対応を支持しない有権者が58%いたことも今年の選挙の特徴を表現している。
民主党は17日から4日間にわたり全国党大会を開く。ニューヨーク、ロサンゼルス、ミルウォーキー、そしてバイデン氏の地元デラウェア州ウィルミントンの4カ所にステージを設置するバーチャル集会だ。初日はニューヨーク州のクオモ知事、2日目はビル・クリントン元大統領、3日目はオバマ前大統領らが演説。最終日の20日にバイデン氏が指名受託演説をする予定だ。集会なしの党大会は初。演説は幅広くライブ中継されるほか、大会のハイライトが民主党員にメールされる。
共和党の全国党大会は24日から27日まで。こちらもバーチャルで、トランプ氏はホワイトハウスで受託演説をするとみられる。劣勢のなか、支持を回復する政策を示せるかが焦点だ。
新型コロナのパンデミック(疾病の大流行)によって今年の大統領選は異例尽くしとなった。非白人の女性が主要政党の副大統領候補に指名されたのは初めてで歴史的。人種差別と警察の改革が大きな争点になるのも珍しい。最も異例なのは郵便投票が主流になる公算であることだ。「パンデミック選挙」と呼んだワシントン・ポスト紙によると、少なくとも全米の77%の有権者は郵便による投票が可能だ。コロナ感染を恐れて大半が郵便投票するとみられている。
米郵政公社(USPS)は国内のほとんどの州と首都ワシントンに、現行の規則では期日内に投票用紙が届けられないと警告した。トランプ大統領は、郵便による投票は不確実性があり、不正の恐れもあると証拠なしに主張する。コロナ支援の追加策に合意できないのは、民主党が郵便投票に関する予算を求めているからだとも批判した。
郵便投票をめぐるトランプ大統領と民主党の対立はエスカレートしている。金融市場の関係者がいま最も恐れているシナリオは、選挙結果をめぐる混乱の長期化だ。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信