米国の代表的な株価指数である「S&P500種株価指数」が最高値圏で推移している。国内で販売されている投資信託でも同指数に連動する運用成果を目指すタイプは人気があり、特にネット証券で積み立て投資の対象商品として選ぶ個人投資家が多い。つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)などでの活用も目立つ。
■主力は「eMAXIS Slim」と「SBI・バンガード」
S&P500は米国市場に上場する大型の500銘柄で構成される。算出方法は異なるが、ダウ工業株30種平均よりカバー範囲が大きく、より幅広い米国株に分散投資したい場合に適している。S&P500に連動する低コストのインデックス型(指数連動型)投信は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が「推奨」したことでも知られる。
国内公募の追加型株式投信(ETF、DC専用除く)のうち、S&P500に連動する投信はレバレッジ型を含めて11本ある。このうち7月末時点の純資産総額(残高)が最も大きかったのは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の1258億円。過去1年間の資金流入額も929億円と一番多かった(図1)。
残高2位は「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・バンガード・S&P500)」。残高は523億円と1位の半分以下だが、信託報酬は年0.0938%(税込み)と最も安い。一般販売されている追加型株式投信(ETFを除く)の中でも最安水準。ネット証券5社(SBI、楽天、マネックス、auカブコム、松井)のNISA口座(つみたて・ジュニア含む)での買付金額は、同ファンドが7月の月間でトップだった(QUICK調べ)。
■低コストで人気、成績も堅調
S&P500連動型ファンドのうち信託報酬が年0.1%(同)を下回るのは、「eMAXIS Slim」と「SBI・バンガード」のみ。過去1年の資金流入額もこの2本が断然多い。他のファンドと人気に差が出たのは、コストの安さが一因とみられる。
運用成績を比べると、1年リターン(分配金再投資ベース)が最も高いのは「iFreeレバレッジ S&P500」で7.5%のプラス。他の10本の値動きがS&P500と連動するのに対し、このファンドだけがレバレッジをかけ指数の2倍程度の値動きを目指す。上昇時にはより高いリターンが期待できるが、リスクやコストが相対的に高い点に留意する必要がある。
「eMAXIS Slim」シリーズについて、他のインデックス型と運用成績を比べたのが図2のチャートだ。投資対象を米国株に絞った「米国株式(S&P500)」は、日本を除く先進国株式や新興国を含む世界の株式を対象にしたインデックス型よりも好成績を上げている。こうしたパフォーマンスの良さも、長期にわたる積み立てで資産形成に取り組む個人投資家を引き付ける一因になっているようだ。
(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)