エネルギー株の様相が変わりつつある。新型コロナウイルス問題による世界的な石油の需要減で旧来の資源メジャーが苦境に立つなか、太陽光発電など再生可能エネルギーが台頭。米大統領選に立候補するバイデン前副大統領の政策も追い風だ。中韓勢が目立つのが特徴で、変化のスピードは意外に早い。再エネが脚光を浴びる背景と関連銘柄の動向を探った。
■中国は国家で後押し
再エネで現在、躍進するのは中国勢だ。かつては風力発電機の世界最大手ヴェスタス(デンマーク)などの欧州勢がリードしていたが、「風車や太陽光パネルは構造が単純で技術的な参入障壁が低く、時間の経過につれコスト面で優位性を持つ中国がシェアを広げてきた」(SBI証券の栄聡投資情報部シニア・マーケットアナリスト)という。
中国は国を挙げて再エネに多額の投資を続けてきた。習近平(シー・ジンピン)最高指導部はハイテク産業育成策「中国製造2025」で、電力供給の増強と大気汚染対策の両立のため再エネを重点分野と位置づける。発電に占める風力と太陽光を合わせた比率を18年の1割弱から、30年には3割弱に高める目標だ。中国はインジウムやガリウムなど太陽光パネルの材料となる主要なレアメタルの最大産出国。コバルトを有するコンゴなどアフリカのレアメタル産出国にも接近する。
※アジアの再エネ関連株の多くは昨年末の水準を上回って推移している
■コロナ禍を好機に
加えて新型コロナ禍が再エネの注目度を高めている。太陽光パネル最大手のジンコソーラー(@JKS/U)の陳康平最高経営責任者(CEO)は「新型コロナ問題を機に各国政府はエネルギー安全保障の面から自己調達に再注力し、古いエネルギーが除かれ太陽光発電が浸透する」と強気な見方を示す。
関連銘柄は足元の株価も好調だ。太陽光ガラス製造の信義光能控股(@968/HK)はコロナ禍にもかかわらず20年1~6月期に増益を確保し、株価は6月末から8月27日にかけて34%上昇した。太陽電池セルの材料となる多結晶シリコン(ポリシリコン)の製造を手掛ける中国の保利協シン能源控股(@3800/HK)は同期間に46%上昇。ジンコソーラーも24%上昇した。住宅用太陽光パネル、家庭用蓄電システムなどを手掛ける米ナスダック上場のサンラン(@RUN/U)は2.5倍に上昇した。
風力発電を手掛ける大唐新能源(@1798/HK)は25%、同業の龍源電力集団(@916/HK)は12%、それぞれ上昇した。この期間の日経平均株価は4%高、中国の上海総合指数は12%高、米ダウ工業株30種平均が10%高で、再エネ関連の上昇ぶりがよく分かる。
■EV、電池もテーマ
再エネの盛り上がりとともに電池関連にも注目が集まっている。車載電池の世界大手、中国・寧徳時代新能源科技(CATL、@300750/SZ)は昨年末比で見ると93%上昇した。中国や欧州連合(EU)などでの環境規制強化に伴いEV車種拡充を急ぐ自動車メーカーに供給先を広げる。同期間に韓国LG化学(@051910/KO)は2.4倍となった。5年後には電池事業の売上高を前期(28兆ウォン)より多い31兆ウォン規模に成長させる計画を発表している(同期間の日経平均は2%安、上海総合指数は10%高)。
再エネの浸透で石油など従来の資源の需要が相対的に落ち込むと、産油国を巡る地政学的な摩擦が生じることも考えられる。各国が外交・国防面から政治的なリスクを避ける保護政策を打ち出せば、普及はスピードダウンする可能性も残る。ただ、再エネはコロナ後のエネルギーの「新常態」ともいえる。投資マネーは関連銘柄から目が離せそうにない。
以下に主な世界の再生エネルギー関連銘柄
【中国】
ジンコソーラー(太陽光パネル)
ロンギ(太陽光発電プロジェクト)
信義光能控股(太陽光ガラス製造)
江山控股(太陽光発電)
協シン新能源控股(太陽光発電)
保利協シン能源(太陽光発電用シリコン)
深セン市拓日新能源科技(太陽光発電)
ゴールドウィンド(風力発電タービン)
大唐新能源(風力発電)
龍源電力集団(風力発電)
順風清潔能源(電池・太陽光発電所の建設・運営)
CATL(車載電池)
【韓国】
ハンファ(太陽光パネル)
LG化学(車載電池)
【米国】
サンラン(住宅用太陽光パネル)
ネクステラ・エナジー(再生エネルギー)
エンフェーズ・エナジー(太陽光パネル用マイクロインバーター)
ソーラーエッジ・テクノロジーズ(太陽光発電関連機器)
ファーストソーラー(太陽光パネル製造)
アプライドマテリアルズ(太陽電池関連)
(注)SBI証券の栄氏らへの取材を基に作成。
〔日経QUICKニュース(NQN) 寺沢維洋〕