データプロバイダーのFTSE Russellはマレーシア証券取引所(ブルサ・マレーシア、以下ブルサ)と提携し、同国の主要上場企業のESGレーティングを公表した。
ブルサは、ESGレーティング公表により、サステナブル投資の機会を追求する投資家を支援し、上場企業が自社のESGパフォーマンスを競合他社と比較できるようにすることを目的としている。
第1弾として、現在220社を超えるマレーシア企業のESGレーティングがブルサのウェブサイト上で公開されている。今回のFTSEとブルサの合意内容に基づくと、公開対象となるESGレーティングはFTSEブルサ・マレーシアEMASインデックスの構成銘柄のもので、これらの時価総額はブルサ・マレーシアのメインマーケット全体の98%に相当する。
またブルサは、半期ごとにニュースレターを発信するほか、「ESGをめぐる新たな動きを透明化し、より幅広く情報を開示する」ことでも合意している。初回のニュースレターはこちら。
FTSEは毎年6月と12月に企業のESG評価をおこなう。マレーシア企業は競合他社と比較された上でランク付けされる。だが、公表されるのは最終的なレーティングのみで、その根拠となるデータや情報は明らかにされない。
ブルサのCEOを務めるDatuk Muhamad Umar Swi氏は、「我々は第一線の規制当局および市場オペレーターとして、市場参加者にサステナブルな投資行動を促す環境を提供したい」と述べている。
今回のようなESGデータプロバイダーと証券取引所の提携は、新興市場では少なくとも3つめのケースとなる。最初の事例ではFTSE Russell、SustainalyticsとISS ESGが台湾の証券取引所と提携して、世界で初となる「統合的なESGレーティングのダッシュボード(Integrated ESG Dashboard)」を開発し、全ての市場参加者が閲覧できるようにした。また今年7月には、Vigeo Eirisがタイ証券取引所と同様の契約を結んだ。
英国に拠点を置くFTSE Russellは2006年からマレーシア市場の幅広い指数の算出に携わっており、今回のブルサとの連携は両者の長年にわたる関係から派生したものといえる。2014年から加わったFTSE4Good Bursa Malaysiaインデックスは、責任ある行動面での評価に優れたマレーシア企業から構成される。
一方、FTSE4GoodのようなESG関連指数の構成銘柄のうち複数の企業は人権侵害に関与しており、かなり以前から繰り返し申し立てを受けてきたケースもある。例えば、医療用防護具(PPE)メーカーのTop GloveやHartalega、農業生産大手Sime Darbyなどで、強制労働や劣悪な環境での労働がたびたび報告されている。
今年6月にFTSE4Good Bursa Malaysiaインデックスの構成銘柄は24社から73社へと3倍に増えた。
※本稿は、レスポンシブル・インベスター(Responsible Investor)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。同社は、ロンドンに拠点を置く、世界の機関投資家に向けた責任投資、ESG、サステナブル・ファイナンスを専門的に取り扱うニュースメディアです。
<金融用語>
ESGとは
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をつなげた言葉で、「責任投資」における重大な課題を指す。
PRIや日本版スチュワードシップ・コードでも、サステナビリティーと長期的な企業価値向上を求める中で、考慮すべき要素としている。
ESGの具体的な項目は、国連や国際機関が議論してきたグローバルな課題を基礎的な枠組みとしており、企業のビジネス活動における持続可能性への取り組みの枠組みである国連グローバル・コンパクトの10原則と近いものが多い。
ESGを考慮した投資(ESG投資または責任投資)は、「社会貢献」を評価する従来のSRIとは異なり、企業が長期的に業績を伸ばす結果としてリターンを生むことを目指す「受託者責任」を明示するものである。その利益を生むために、まず社会から要請される課題への対応を果たし、それによって事業におけるリスクを軽減できる体質を持つこと、さらに本業での価値創造が実現されるシナリオを描けることなどが評価の尺度となる。
<告知>
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