米大統領選まで1カ月あまりとなり、米国時間29日夜(日本時間30日午前)に行われる米大統領候補討論会が注目されている。討論会の時間は90分間で、テーマは6つで15分ずつ行われる。取り上げられる予定のテーマは、①両候補の歩み、②連邦最高裁判所、③新型コロナウイルス、④経済、⑤人種と暴力、⑥選挙の正当性。
■6つのポイント
SMBC日興証券は29日のレポートで、討論を見極めるうえでのポイントを以下のように示した。その上で、「いずれの候補が大統領としてふさわしい威厳をもって、国家のリーダーたる毅然とした態度で、堂々と振舞うか」が焦点になると指摘した。
①両候補の歩み
経済などが別テーマで挙げられている点を踏まえれば、外交関連が通常は念頭に挙がる。ただ、それに限られず、それぞれのスキャンダル関連も含まれよう。NYTの報道によって再び浮上した納税問題への対応がトランプ氏は必要になるかも知れない。
②連邦最高裁判所
トランプ氏は保守派優位の司法を確立することで保守派の支持を盤石にしたと考えられるが、同時に中道派の支持を失うリスクがある。候補者を示さないなどの曖昧な態度により対保守という観点で中道派とリベラル派の結束を図ることがバイデン氏にとってベストだが、態度が曖昧過ぎれば両方の支持を失うかもしれない。
③新型コロナウイルス
選挙キャンペーンにおけるバイデン氏のトランプ氏に対する攻撃もコロナ禍対応に重点を置いてきた。CDCとトランプ氏の不和もあり、トランプ氏の劣勢が予想されるテーマだ。ただ、感染抑制を声高に言うことは簡単だが、経済活動との両立を実現する計画の提示を行わなければ、バイデン氏も支持を失いうる。
④経済
将来の経済政策という観点では、未だ終結を見ない経済対策に関する議会の議論に加えて、バイデン氏が掲げるグリーン・ニューディールそして増税が問われよう。
⑤人種問題と暴力
人種問題とそれに付随した暴力の激化に対して、有権者は米国が間違った方向へ向かっているとの判断を明確に下した。その過ちの修正を如何に進めていくかが問われる。
⑥選挙の正当性
郵便投票が不正を助長すると主張しつつ、トランプ氏は円滑な政権移行を約束していない。両候補が自らの勝利を信じ、戦いの舞台が司法の場へ移る可能性も否定できない状況だ。戦いを諦めない姿勢は、支持者繋ぎとめに有効だが、選挙プロセス自体を否定すれば大統領としての資質を疑われる可能性がある。
■バイデン氏はトランプ氏のかく乱を乗り切れるか
ソニーフィナンシャルホールディングスの尾河眞樹氏は今回のテレビ討論会は、トランプ大統領がコロナ対応による劣勢から攻勢に転じつつあるなかでの一騎打ちとなり、「トランプ大統領に議論をかく乱されることなく、バイデン氏がいかに明解に政策を主張できるか」に注目している。
加えて「米議会で膠着している、追加の経済対策の行方」にも注目している。先週は民主・共和の歩み寄りに期待が広がり、一時米株価が上昇する場面もみられた。しかし、依然として隔たりは大きく「進展がなければ、再びこの問題が株価の重しとなり、じりじりと円高圧力がかかりやすくなる」とみている。
また、今週発表される9月の米ISM製造業景況指数や9月の米雇用統計などの経済指標に関しては「これまでの米国は予想より速いペースの景気回復を示してきたが、そのモメンタムが維持されるかが焦点となろう」と指摘。「追加の経済対策がなかなか決まらないなか、景気回復にブレーキがかかるようであれば、ドル円も再び104円台に反落する公算が大きい」と述べていた。(QUICK Market Eyes 池谷 信久)