9月末に有料チャンネル「ショータイム」で放送されたドラマ「ザ・コミー・ルール」をオンデマンドで視聴した。トランプ米大統領に解任されたジェームズ・コミー元FBI長官の回顧録を映像化した作品だ。4年前の米大統領選を思い出しながら前後編を一気にみた。
前編では民主党のヒラリー・クリントン大統領候補が国務長官時代に私的メールを公務で使っていたことをめぐる捜査が描かれた。コーミー元長官は当時、捜査をいったん打ち切ったあとに新証拠を発見したとして捜査を再開、選挙直前に無実と判断したと発表したが、クリントン氏はダメージを克服できず選挙で敗北した。番組導入部分に「大きいオクトーバーサプライズだ」と関係者が発言する4年前の映像が流された。
大統領選の1カ月前の10月に選挙戦を左右する重大イベントが発生することを「オクトーバーサプライズ」という。1980年の大統領選における在イラン米国大使館人質事件に関する裏工作が有名だ。2020年、今年の選挙ではトランプ氏の新型コロナウイルス感染が大きなサプライズになった。米主要メディアは、新型コロナ問題が米大統領選の最重要争点に再浮上したと伝えた。
トランプ氏の病状をめぐっては、主治医のコンリー医師とメドウズ大統領首席補佐官から食い違った内容の発言があり混乱した。ニューヨーク・タイムズによると、病状の悪化を示唆する発言にトランプ氏が激怒し3日のビデオによるメッセージでイメージ回復を狙ったとされる。4日午後には入院中のウォルター・リード病院の病室を抜けて大統領専用車から病院の外に集まった支持者に手を振るサプライズもあった。ケーブル・ニュース・チャンネルがマスク姿のトランプ氏の映像を繰り返し放送した。
CNBCによると、ブルッキング研究所のシニアフェローのジョン・フダック氏は今年はじめに発表した報告書で、大統領がコロナ感染するシナリオで、症状が軽ければ、米国民とコミュニケーションをとることが重要だと指摘した。トランプ氏はフダック氏の助言通りのパフォーマンスを示し、回復に向かっていることを強く印象付けた。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙とNBCが4日に発表した最新の世論調査で、民主党大統領候補のバイデン氏がトランプ氏を14ポイントリードした。53%対39%。7月時点の11ポイント差が前月に8ポイントに縮まっていた。9月末の第1回テレビ討論会直後の調査で、トランプ氏の言葉による異例のバイデン氏発言封じ込め戦術が裏目に出て、支持率の差が大幅に広がった。
オクトーバーサプライズで情勢が変わるかは不透明だ。感染の苦しみを経験したトランプ氏が軌道修正する可能性があるが、選挙戦の劣勢を挽回するのは容易ではない。ドラマ「ザ・コミー・ルール」の後編は、ロシア疑惑に焦点をあてていて、トランプ氏が「嘘をついている」との印象を視聴者に与える。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、株式相場の上昇をけん引したアップル、マイクロソフト、アルファベットなどの株価が、バイデン氏の税制改革案が影響して不安定になる可能性があると報じた。選挙で民主党がホワイトハウスと議会を制すれば、連邦法人所得税率を21%から28%へ引き上げるバイデン氏の提案が意識されるとしている。ウォール街の知人は「バイデン銘柄が物色されはじめている」と話している。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信