【日経QUICKニュース(NQN) 西野瑞希】外国為替市場でユーロが戻りを試している。欧州中央銀行(ECB)当局者によるユーロ高けん制発言をきっかけに9月後半には上値の重さが目立ったが、10月に入り再び戻り歩調を強めている。回復しつつある欧州の経済指標が追い風となった。一方、デフレリスクを懸念しECBは一段と緩和姿勢を強める。英国と欧州連合(EU)の通商交渉は難航しており、ユーロの戻りはほどなく一巡感を強める可能性がある。
■指標の回復追い風
ユーロは6日の欧州の取引時間帯に対ドルで一時1ユーロ=1.1807ドル近辺まで上昇し、およそ2週間ぶりの高値を付けた。足元では好調な欧州の経済指標の発表が続いた。5日発表の8月のユーロ圏小売売上高は前月比で4.4%増、6日発表の8月の独製造業新規受注は前月比で4.5%増といずれも市場予想を上回った。実体経済が改善の兆しを見せたことがユーロの追い風となった。
※対ドルのユーロ(日足)
ユーロの先行きを見極める上で、米大統領選からも目が離せない。市場では増税を公約に掲げる民主党のバイデン氏が優勢との見方が広がる。SMBC信託銀行プレスティアの二宮圭子氏は「バイデン氏が勝利すれば法人税引き上げにより株価が下落する可能性が高い。ドルは売られ、実体経済が回復しつつある欧州の通貨に資金は流れやすくなる」と予想する。
■くすぶる量的緩和の思惑
もっとも、ユーロの足元は盤石ではない。9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP、速報値)は前月から減速していた。ECBのレーン専務理事は6日、「インフレ目標を確実に達成するため、新型コロナウイルス感染拡大による苦境を脱した後も、十分に緩和的な政策を維持する必要がある」と述べたと伝わった。デフレリスクが追加緩和への圧力を高めることも想定される。ECBの金融政策について野村証券の春井真也氏は「12月会合で量的緩和の規模を拡大する可能性がある」との見方を示す。追加緩和はユーロ安の要因だ。
※ECBのバランスシート(単位:百万ユーロ)
英国とEUの貿易関係などを巡る交渉が難航していることもユーロの懸念材料だ。一部報道では「EUはジョンソン英首相が設定した10月15日の交渉期限を譲歩案を示すことはない」とも伝わっている。交渉が決裂すれば欧州経済に混乱を招き、ポンド安に加え、ユーロ安が進む可能性がある。
日本時間7日夜にはラガルドECB総裁が講演する。米連邦準備理事会(FRB)に追随してECBが物価目標の一時的な上振れを容認する戦略を進める可能性もある。みずほ証券の鈴木健吾氏は「インフレ目標達成のためにユーロ高をけん制するという当局者のスタンスが継続すれば、ユーロの上値は重そうだ」との見方を示す。今後の政策指針やユーロの先行き見極める上で市場の注目は集まる。