【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】外国為替市場でオーストラリア(豪)ドル相場の上値が重くなっている。豪準備銀行(中央銀行)による追加緩和が近いとの見方が広がっているからだ。米国の追加経済対策の不透明感から「低リスク通貨」とされる円や米ドルに対して豪ドルが買われにくい状況にもなっている。新型コロナウイルスの感染者数など、悪影響が比較的小さいとの見方から4月以降に騰勢を強めてきた豪ドル相場は転換点に差し掛かっている。
■追加緩和への思惑強まる
6日、豪中銀が理事会で政策金利を0.25%に据え置くと発表すると、豪ドルは対円で1豪ドル=75円台後半から76円台前半に上昇した。ただ買いの勢いは長くは続かず、翌日には75円ちょうど近辺まで下落。8日も75円台後半と戻りは鈍い。直近で最も高い8月末から約3%安となった。
豪中銀のロウ総裁が理事会後の声明で「追加の金融緩和策がどのように雇用を支えることができるか検討していく」と言及。雇用の回復に向けて追加緩和をする姿勢を明確にし、11月3日の次回会合で追加緩和に踏み切るとの見方が強まりつつある。
野村証券の宮入祐輔氏は、政策金利の0.10%への引き下げを見込む。「豪州の雇用状況は最悪期を脱しておらず、賃金上昇率やインフレ率も軟調に推移している」と指摘した。
豪中銀は10月の声明文で「失業率は以前の予想よりも低い水準でピークを迎える公算が大きい」とした。8月の声明で示した「失業率が年末にかけて10%程度まで上昇する」との予測から回復基調にあることを打ち出したが、市場関係者は警戒モードを崩していない。
■豪ドルも混迷の1カ月に
11月会合で豪中銀が政策金利を0.10%に引き下げるなど追加緩和に踏み切った場合の豪ドル相場の見通しはどうなるか。あおぞら銀行の諸我晃氏は、1豪ドル=74円ちょうど近辺まで下落余地があるとみている。
次回の会合結果が出る11月3日は米大統領選の投開票の直前に当たり、金融市場はより不安定さを増している可能性がある。今月15日のロウ総裁の講演や、20日発表の10月会合の議事要旨を通じて、今後の利下げの確度や豪ドル相場への影響を探る1カ月になりそうだ。