【NQNニューヨーク 古江敦子】米長期金利の指標である10年物国債利回りは14日、0.72%と前日比横ばいで終えた。米景気の急速な持ち直しを促した経済支援の追加対策を巡る与野党協議が進展せず、景気の先行き不透明感から債券相場の動意は乏しい。米連邦準備理事会(FRB)は引き続き財政出動を強く求めているが、大規模な支援の必要性を疑問視する声も出始めた。

■FRBのMMT積極介入
「コロナ禍でFRBに起きた一番の変化は、米政府のMMT(現代通貨理論)の動きに積極介入したことだ」。米調査会社ヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ氏はそう指摘する。MMTとは自国通貨で借金できる政府は債務返済に充てる通貨を中央銀行が限りなく発行できるため、財政出動を継続でき、急速なインフレが起きない限り債務不履行にはならないという理論だ。財政規律の緩みにつながるため、FRBはこれまでMMTに距離をおいていた。だが、状況は変わったようだ。
ヤルデニ氏によると、今年8月までの過去1年間で米財政赤字は2兆9200億ドル、FRBの米国債保有額は2兆2600億ドルとともに過去最高になった。FRBがコロナ禍で量的金融緩和策を再開した結果として、米政府の借金は6630億ドル程度にとどまり「コロナ禍と戦うために、財務省とFRBは一体となってMMT改革に取り組んでいる」と語った。
■追加対策の必然性を疑問視
クラリダFRB副議長は14日の講演で「追加の金融政策と財政政策が必要となる」と強調した。パウエル議長や地区連銀総裁らもそろってそう主張するが、14日も与野党の追加対策協議は合意に至らず、共和党のムニューシン米財務長官は「米大統領選前の合意は困難」との考えを示した。そんななか、追加対策の必然性を疑問視する声もある。
米国みずほ証券のスティーブン・リチウト氏は「米国のファンダメンタル(経済の基礎的条件)は健全で、追加の経済対策は必要ではない」とみる。9月の米消費者信頼感指数は101.8と前月(86.3)から急速に持ち直し、8月の米中古住宅販売件数は約14年ぶりの高水準となるなど米経済は部分的に「V字型」で回復しているという。「FRBが財政出動を求めるのは、目標とする雇用の最大化を加速させるのに財政出動が最も効力があるからだ」と付け加えた。
国際通貨基金(IMF)は14日に世界で拡大する政府債務について報告した。財政出動はまだ必要としながらも、景気の回復に伴い支援の分野はより「選択すべきた」と指摘した。財政出動の対象を回復が遅れる経済分野に徐々に絞っていくことを推奨しており、トランプ米大統領が求める空運業などの一部支援策と重なる面がある。
もっとも、米政府による経済対策が長く途切れたままだと「景気回復の勢いは急速に鈍る」(オックスフォード・エコノミクスのジョン・キャナバン氏)と懸念される。経済対策の成立は想定より遅くなる可能性は高まっており、安全資産である米国債の需要は当面途切れそうにない。