【日経QUICKニュース(NQN)西野瑞希】外国為替市場でユーロが弱含んでいる。10月28日の海外市場では対円で一時、3カ月半ぶりの安値を付けた。欧州では新型コロナウイルスの感染者数が急増し、フランスは28日に全土で再び外出制限に踏み切ると発表、ドイツも飲食店などの営業禁止を発表した。景気下押し要因となるのは間違いなく、29日に理事会を予定する欧州中央銀行(ECB)が今後、追加緩和に動く可能性も高まる。ユーロへの売り圧力が高まる状況が続いている。
■1ユーロ=121円台でとどまれるか
ユーロは28日、対円で1ユーロ=122円19銭まで売られ、7月中旬以来の安値をつけた。フランスのマクロン大統領は28日、30日から少なくとも12月1日までの外出制限を発表した。ドイツのメルケル首相も同日、11月2日から飲食店や娯楽施設などの営業を禁止すると発表した。アイルランドはすでに外出制限を実施しており、スペインやイタリアも規制を強化している。
ユーロは29日の東京市場ではいったん買い戻しも入り対円で122円台半ばで取引されている。だが「欧州での行動制限は経済に大きな悪影響を与えるため、ユーロは122円を割る可能性が十分にある。121円台でとどまれるかどうかもあやしい」(大和アセットマネジメントの亀岡裕次氏)との見方がある。
通貨オプション市場で、取引の多いユーロ・ドルの予想変動率(インプライド・ボラティリティー)を1カ月物でみると、9%近くまで上昇し4月初め以来の高水準を付けている。米大統領選の1カ月前に大幅に上昇した後も高水準を保っており、このところの上昇は新型コロナの感染急拡大が響いている面がある。
■ECBの追加緩和は?
29日のECB理事会を巡っては追加緩和観測も浮上しているが、いずれにせよラガルド総裁の会見などを通じて将来的な追加緩和が意識されそうだ。みずほ証券の鈴木健吾氏は総裁会見について「通貨高けん制や今後の追加緩和を示唆する発言が出れば、ユーロ安要因になる」とみる。
市場参加者の間ではECBは12月にもパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ規模拡大を決めるとの予想が多い。欧州の景気の不透明感は強く、追加緩和の可能性も意識されてくるなかで、ユーロには売り圧力がかかりそうだ。
<金融用語>
インプライド・ボラティリティーとは
オプション取引におけるテクニカル分析指標の一つで、将来の変動率(ボラティリティ)を予測したもの。予想変動率ともいう。 オプション取引のボラティリティの算出方法は2種類ある。1つは過去のデータに基づいて統計的に算出するヒストリカルボラティリティ。もう一つが市場で取引されている実際のオプション価格から逆算して導き出されるインプライド・ボラティリティ(Implied Volatility、IV)である。 インプライド・ボラティリティの計算にはブラックショールズモデルなどが用いられ、原資産価格、権利行使価格、金利、残存期間、原資産のボラティリティという構成要素からオプション価格(理論価格)を算出する。実際の市場オプション価格をもとに同方程式の構成要素である原資産のボラティリティを逆算するアプローチも可能。算出されたインプライド・ボラティリティには市場参加者の予測や期待などが反映されている。