【NQNロンドン=椎名遥香】欧州中央銀行(ECB)は29日、金融政策を議論する理事会会合を開き、政策の現状維持を決めた。景気回復の勢いが失速しているとして、経済見通しを更新する次回12月会合での追加緩和を強く示唆した。「緩和サイン」を受け、金融市場では欧州国債が買われ、ユーロは対ドルで約1カ月ぶりの安値水準を付けた。
■追加緩和へ準備
ECBは声明で「最新の景気評価に基づいて政策手段を見直す」と明記した。ラガルド総裁は会見で、新型コロナウイルスの感染拡大がサービス業を中心に経済活動の停滞を招いており「ユーロ圏景気は明らかに下振れリスクがある」と警戒感を示した。9月時点でECBは10~12月期の経済成長率を3.1%と予測していたが、ラガルド氏は「楽観的すぎる」と認めた。12月に公表される経済見通しは下方修正される公算が大きく、合わせて追加緩和策を打ち出すとみられる。
ラガルド氏は、最適な政策の組み合わせを探るため「全ての政策ツールが再調整の対象となる」と強調した。具体的にどの手段を強化するのかについてヒントは少なかったが、すでにECBスタッフが追加緩和策の検討に取り組んでいることを明かした。
■PEPP延長
市場ではパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入枠拡大と期限延長を予想する声が多い。PEPPの期限は「少なくとも21年6月末まで」で、1兆3500億ユーロの購入枠のうち約半分の6千億ユーロが利用されている。
ラガルド氏は、次回会合まではPEPPの柔軟性を活用し、緩和的な金融状況の維持に努めると述べた。足元の購入ペースを前提とすると21年夏まで継続できるだけの枠が残っており、買い入れ加速は可能だ。欧州で移動制限や店舗営業中止がさらに広がって景気が冷え込むようなら「12月の定例理事会を待たずに追加緩和に動く可能性もある」(キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ケニンガム欧州チーフエコノミスト)との見方も出ている。
緩和の示唆を受けて、29日の欧州国債利回りは低下(価格は上昇)した。ドイツ長期金利は一時、前日比0.02%近く低いマイナス0.64%台後半まで低下し、イタリア長期金利は0.07%ほど低い0.69%台後半まで低下する場面があった。外国為替市場ではユーロが売られ、対ドル相場は一時1ユーロ=1.1650ドル近辺と9月28日以来の安値を付けた。