米大統領選は日本時間4日午前(米東部時間3日夜)、各州で投票が締め切られ、開票作業に入る。全国ベースの世論調査では民主党のバイデン前副大統領が優位だが、激戦州では共和党のトランプ大統領が差を縮めている。新型コロナウイルスのまん延で郵便投票を含む期日前投票が急増した。郵便投票は開票に時間がかかるとみられ、大勢判明が遅れる可能性もある。
■4年前は日本時間午後4時半ごろだった
大統領選は各州に割り振られた選挙人の獲得数を争い、全米538人の過半数の270人以上を獲得すれば当選する。東部の州から順次投票が締め切られ、締め切り時間の選挙人数を積み上げると日本時間の4日午前10時に選挙人数が過半に達する。西部各州で投票が続いているうちに勝者が確定する可能性がある。
メディアが当確を出す時間は、過去20年間は日本時間で選挙日翌日の正午から午後5時に収まってきた。2016年は米メディアがトランプ氏勝利を報じたのは日本時間の午後4時半ごろ。ただ、JPモルガン・チェースは「最近は主要メディアが勝者判定に慎重になる傾向が強いうえ、今回は郵便投票の大幅増もあり結果判明が大幅に遅れかねない」と指摘する。
郵便投票など期日前投票の多さが結果判明を巡る不透明感を高める。期日前投票を済ませた有権者は約1億人。これだけで16年の大統領選の投票総数の約7割に達する。米国では州ごとに投開票の制度が異なり、郵便投票の必着日や署名などの確認作業の開始日も違う。選挙当日の開票作業の進捗に差が出ることが想定されるうえ、4日以降の郵便投票の到着を認める州もある。
■郵便投票の扱いにばらつき
最大の激戦州の1つ、フロリダの郵便投票は3日必着だが、確認作業は9月24日に始めた。このため同州は比較的早い時間に大勢が判明する可能性がある。一方、激戦州ペンシルベニアは郵便投票の確認作業は選挙日まで着手せず、6日到着分まで受け付ける。同州のウルフ知事は「おそらく選挙の夜に結果は分からない。辛抱してほしい」と述べ、結果判明に数日かかる可能性を示唆した。
郵便投票の開票に時間がかかり、同じ州で通常の投票の開票が先に集計されるケースもありそうだ。民主党は郵便投票の割合が高いとみられ、通常投票の開票が先に進むと序盤でトランプ氏がリードする可能性がある。民主党は同氏が一方的に勝利宣言する可能性を警戒しており、現実となれば混乱が広がりそうだ。
結果が判明しても得票数が僅差だと敗者が再集計などを求める可能性もある。2000年の大統領選ではフロリダの集計を巡って法定闘争が繰り広げられ、最終決着には1カ月強かかった。トランプ氏は郵便投票を「不正の温床」と批判し、投票日を過ぎて到着した郵便投票を認めるべきではないとも主張している。メディアがバイデン氏に当確を出しても、トランプ氏が郵便投票の無効などを訴えて訴訟にもつれる可能性も小さくはない。
■全50州とワシントン・コロンビア特別区の投票終了時間と選挙人数、郵便投票については主な激戦州の確認作業の開始日と必着日を一覧にした。
【各州の投票終了の予定時間】
※日本時間(4日)、カッコ内は選挙人数、★は激戦州
8:00 インディアナ(11)、ケンタッキー(8)
9:00 サウスカロライナ(9)、★ジョージア(16)、
ニューハンプシャー(4)、バージニア(13)、
バーモント(3)、★フロリダ(29)
9:30 ウェストバージニア(5)、★オハイオ(18)、
★ノースカロライナ(15)
10:00 アラバマ(9)、イリノイ(20)、オクラホマ(7)、
カンザス(6)、コネティカット(7)、サウスダコタ(3)、
★テキサス(38)、テネシー(11)、デラウェア(3)、
ニュージャージー(14)、ノースダコタ(3)
★ペンシルベニア(20)、マサチューセッツ(11)、
★ミシガン(16)、ミシシッピ(6)、ミズーリ(10)、
メーン(4)、メリーランド(10)、ロードアイランド(4)、
ワシントンDC(3)
10:30 アーカンソー(6)
11:00 ★アリゾナ(11)、★ウィスコンシン(10)、
コロラド(9)、ニューメキシコ(5)、ニューヨーク(29)、
ネブラスカ(5)、★ミネソタ(10)、ルイジアナ(8)、
ワイオミング(3)
12:00 ★アイオワ(6)、アイダホ(4)、★ネバダ(6)、
モンタナ(3)、ユタ(6)
13:00 オレゴン(7)、カリフォルニア(55)、ワシントン(12)
14:00 アラスカ(3)、ハワイ(4)
【激戦州の郵便投票の必着日と確認開始日(米国時間)】
確認開始日 必着日
ジョージア 9月15日 3日
ミネソタ 9月18日 3日
フロリダ 9月24日 3日
ネバダ 9月24日 10日(消印は3日)
ノースカロライナ 9月29日 12日(消印は3日)
オハイオ 10月6日 13日(消印は2日)
アリゾナ 10月7日 3日
テキサス 10月22日 4日(消印は3日)
アイオワ 10月31日 9日(消印は2日)
ミシガン 11月2日 3日
ウィスコンシン 11月3日 3日
ペンシルベニア 11月3日 6日(消印は3日)
※確認開始日は米国野村証券の10月29日付リポートに基づく
〔NQNニューヨーク=戸部実華、岩本貴子、川内資子〕