米国の大統領と議会の多数派が異なるねじれが政治の「グリッドロック(行き詰まり)」となり、それが「ゴルディロックス(適温)」相場の一段の強化につながるとの見方が出ている。11月5日の米株式市場でダウ工業株30種平均の上げ幅は一時600ドルを超えた。
■カネ余りの相場押し上げ期待
4日に続き5日の相場上昇を主導したのも大型ハイテク株だ。スマートフォンのアップル、ソフトウエアのマイクロソフト、ネット通販のアマゾン・ドット・コムはいずれも4%前後上昇する場面があった。ねじれ議会の継続で、民主党が掲げるハイテク企業への規制強化の懸念が後退したことに伴う買いが継続した。
大統領選の結果が早期に判明し、米政治の不透明感が後退するとの期待も相場を支えている。米メディアによると、民主党のバイデン前副大統領は5日午後までに253人の選挙人を獲得。264人に達したと
「バイデン大統領、上院共和党、下院民主党」のシナリオは事前の想定では株安・金利低下(債券価格は上昇)だった。大規模な景気刺激策による国債増発への懸念が和らいだことから、長期金利は大きく低下した。一方、株式市場は「低成長と低金利の長期化に伴うカネ余りによる相場の押し上げ期待が、景気への懸念を上回った」(米証券スタイフェルのバリー・バニスター氏)ことで上昇したという。
■金融緩和の継続
年末にかけては世界各国で再び金融緩和が相次ぐ見通しだ。英イングランド銀行(中央銀行)は5日、量的金融緩和策の拡大を発表。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も12月の理事会での追加金融緩和を示唆している。
米連邦準備理事会(FRB)は5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でゼロ金利政策と資産購入の継続を決めた。景気浮揚のため、政府の財政政策と中銀の金融緩和のポリシーミックス(政策協調)の重要性を訴えているFRBのブレイナード理事がバイデン政権で財務長官に就任するとの観測もある。その場合、財政拡大と金融緩和の連携が一段と進む可能性がある。
足元で進むドル安で、資金流出懸念が和らぐ新興国も国内景気優先の金融緩和を継続しやすい。「TINA(There is no alternative=他の選択肢はない)」と呼ばれる消去法的な資金が一段と株式市場に流入しやすい状況が整ってきたとみられそうだ。
■S&P500種が4000程度まで上昇?
スタイフェルのバニスター氏は来年、S&P500種株価指数が3800~4000まで上昇すると見込む。名目金利から物価上昇率を引いて計算する実質金利と、株価指数のPER(株価収益率)の分析によると、実質金利がマイナス0.7%近辺で推移した場合に許容できるS&P500種のPERは26倍程度という。
ファクトセットによると21年のS&P500種構成銘柄の1株利益は166ドル程度。PERの26倍を多少割り引いても、実質金利のマイナス状態が続く限り株式が選好され、4000程度までの上昇は見込めるというわけだ。この見立てが当たっていれば、大統領選後の株価急騰も決して不自然にはみえない。(NQNニューヨーク 張間正義)