【NQN香港=林千夏】11日午前の香港株式市場で中国のネット銘柄が大幅に下落している。アリババ集団は一時24.40香港ドル(8.85%)安の251.00香港ドルまで下落し、8月21日以来約2カ月半ぶりの安値を付けた。中国の規制当局である国家市場監督管理総局は10日、ネット企業の独占的行為を規制する新たな指針の草案を公表した。アリババなどが念頭にあるとみられる。同社は傘下の金融会社アント・グループが当局の指示で上場延期になったばかりで、規制範囲の拡大が事業運営に水を差すとの警戒が強まった。
■草案の中身
草案では、新規参入者を阻害するための連携や原価割れの商品提供など、反競争的行為を防ぐための枠組みを幅広く設けた。独占行為の例として、ネット企業が取引先に対して他のネット企業と取引しないよう「二者択一」を求める行為や、ビッグデータを利用して顧客の消費能力などに応じて販売価格に差を付ける問題を挙げている。
中国のネット企業は海外上場のために「VIE(変動持ち分事業体)スキーム」を活用しているが、今後は事前申告を義務付ける可能性もある。
■アントの上場延期から強まる不透明感
中国当局はこれまでも独占的行為について警告していたが、今回の草案公表に対して市場が大きく反応したのは「アント上場延期の件も含め、ネット企業を標的にした当局の動きが増えているため」(京華山一国際の彭偉新・研究部主管)という。草案は11月30日までパブリックコメントにかける。彭氏は「ネット企業をどこまで締め付けるかが不明なため、指針の最終的な内容が明らかになるまではリスク回避の売りが出やすい」という。
11日の香港市場ではアリババのほか、中国ネット通販2位の京東集団(JDドットコム)やネットサービスの騰訊控股(テンセント)、出前アプリの美団も大幅に下げた。
※中国のネット関連株の株価を昨年末を100として指数化