CNNは23日午後、米連邦政府一般調整局(GSA)が政権移行の公式手続きを開始したと速報した。トランプ米大統領が3日投票の米大統領選での敗北を認めないため、GSAはバイデン氏の勝利を認定していなかった。GSAが公式に認めたことで、バイデン陣営は政権移行のため公費を使うことができる。情報機関や新型コロナウイルスに関する情報にもアクセスできる。
米大統領選は第2章とも言える段階に入った。激戦州での勝敗を認定する手続きが相次ぐ。ミシガン州が23日、バイデン氏勝利を公式認定した。連邦法は12月8日を結果認定の期限と定めていて、指名された各州の選挙人が14日に投票する。
NBCの報道番組「ミート・ザ・プレス」によると、トランプ陣営は選挙結果に関し36の訴訟を起こし、裁判所は22日までに24の申し立てを退けた。残る12の訴えについてトランプ氏の弁護団が十分な証拠を提出しておらず、選挙結果が覆る可能性は極めて低いとみられている。
トランプ氏は23日、政府機関に政権移行手続きを進めるよう指示したとツイッターに投稿した。敗北宣言はしていないが、事実上、敗けを認めたとも受け止められる。残る訴訟を取り下げるかが今後の焦点となる。
選挙結果をめぐる法廷闘争とは別に、トランプ・ファミリーと側近が1月20日後に訴追されるリスクにどう対応するか議論している可能性がある。ニューヨーク州の検察がトランプ・ファミリー企業のビジネスの不正や税金問題に関し、憲法が定める現職大統領への保護が切れた後に訴追に動く可能性が非常に高いとニューヨーク・タイムズ紙など複数のメディアが報じている。
訴追リスクに備え、恩赦を検討するシナリオもあるとされる。大統領が交代する1月20日正午までにトランプ氏が辞任し、昇格した「ペンス新大統領」がトランプ氏に全ての刑罰に対する恩赦を与えるというシナリオだ。VOXが報じたほか、ロサンゼルス・タイムズは恩赦の可能性があるとする寄稿文を掲載した。
ロシアなど一部を除く主要国の首脳がバイデン氏の勝利を祝福した。バイデン氏の政権移行チームは23日、外交・安全保障分野の主要人事を発表した。バイデン氏は新財務長官に連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長を起用すると伝えられた。GSAが公式手続きに着手したことで政権移行作業が加速する見通しだ。トランプ氏は退任後のリスク対策に焦点を移すのか。「トランプ大統領は終わった」とする社説をニュースデイのウェブ版が掲載した。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信