【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】量的緩和拡大が見込まれる欧州中央銀行(ECB)の10日の理事会を前に、外国為替市場でのユーロの上昇基調はECBの会合後も崩れないとの予想が広がっている。本来はユーロの売り材料となるはずの追加緩和の影響を吸収してユーロ買いを誘うのは、新型コロナウイルスのワクチン普及への期待などだ。投資家は運用リスクを積極的にとる「リスクオン」の姿勢を強めており、それがユーロ高を支えている。
■緩和の織り込み進む
ECBは大規模な量的緩和策の拡充を決めるとの予想は多い。コロナ禍対応で特別枠を設けた国債などの資産購入(PEPP)の期限を現在の2021年6月末から延長し、同時に総額を現在の1兆3500億ユーロから5000億ユーロ上積みすることなどが、市場参加者の間で有力視される。
ECBのラガルド総裁は11月の講演で「危機対応の資産購入などが検討の柱になる」と述べ、今回の理事会の決定を「事前通告」した格好となっている。このため、為替相場は追加緩和の織り込みがだいぶ進んでおり、そのうえでユーロは上昇が続く。9日時点では1ユーロ=1.21ドル近辺で取引されており、4日には1.2174ドルと2018年4月以来の高値を付けていた。
※ユーロドルのチャート
ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「ECBの決定が想定内の追加緩和策にとどまれば、理事会をにらんで手控えていたユーロ買いも加わり、上昇の勢いが加速することも考えられる」と話す。
■ワクチンで加速するリスクオン
ユーロ買いを誘っているのが、リスクオンに傾く投資家の姿勢だ。このところドルは円と同様にリスクオンの局面では売られやすくなっており、円の対ドル相場は方向感を欠く。リスクオンで買い、リスクオフ(回避)で売りが明確になっているのがユーロだ。
リスクオンに勢いを付けたのが、ワクチン普及期待の高まりだ。英国では8日、米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンの接種が始まり、米国でも食品医薬品局(FDA)が近く承認するとの見方が増えている。野村証券の春井真也氏は「ワクチン接種開始により、投資家心理の改善が進む」とみて、ユーロは年内に1.23ドルまで上値の余地があると予想する。世界的な経済正常化への期待は、ECBの追加緩和の影響を飲み込んでユーロに対する強気な見方を勢いづけている。