【NQNニューヨーク 横内理恵】足元で続いていた米長期金利の上昇にいったんブレーキがかかった。12月21日の米債券市場では、長期金利の指標となる米10年債利回りは前週末比0.02%低い(価格は高い)0.93%で取引を終えた。英国で新型コロナウイルスの変異種が急速に広がっているのを受け、安全資産である米国債の買いが優勢になった。2021年の長期金利上昇を織り込む動きが目立っていた債券相場だが、節目の1%を明確に超えて行く時期はまだ見えない。
■財政出動が金利低下を抑制
21日は米長期金利が早朝に0.88%まで低下する場面があった。感染力の高いコロナ変異種の拡大を受け、英政府はロンドンで3回目のロックダウン(都市封鎖)に踏み切り、欧州主要国は相次いで英からの渡航を禁止した。コロナまん延が一段と深刻化すれば、欧州や世界経済のさらなる停滞を招く。「米議会が追加の経済対策で合意していなかったら、『質への逃避』目的の米国債の買いはもっと大きかったのではないか」(BMOキャピタル・マーケッツ)という。
米国では議会指導部が20日に失業保険の拡充措置や家計への現金給付、中小企業の雇用支援などを含む9000億ドル規模の経済対策で合意した。数日内に成立し、「21年1~3月期にかけて米景気を下支えする」(シーバート・ウィリアムズ・シャンクのデービッド・コード氏)とみられる。
財政出動は米国債の発行増につながる。金利の上昇要因とみなされるが、今のところ債券需給の悪化を危ぶむ声は少ない。TD証券は21会計年度(20年10月~21年9月)の米連邦政府の財政赤字が2兆7000億ドル程度と試算し「過去最大だった20年度(約3兆1000億ドル)から赤字幅は縮小する」とみる。大統領と上下両院の多数派政党が異なる「ねじれ」が続き、バイデン新政権で大型の財政支出が見込みくいためだ。米財務省が四半期ごとに見直す米国債の発行規模も2月は増額を見送る公算が大きいという。
■米長期金利の先高観は変わらず
米連邦準備理事会(FRB)も必要とあれば、資産購入策で買い入れる米国債の年限を長期化するなど追加の金融緩和に踏み切る方針だ。21日に米財務省が実施した20年物国債入札では落札された利回りが市場実勢を下回るなど、参加者が減る年末でも底堅い需要がみられた。
コロナワクチン普及が米景気の本格回復を後押しするとの見方を背景とした米長期金利の先高観は変わっておらず、多くの金融機関は顧客に対して来年の金利上昇に備えるよう勧めている。18日には10年債と2年債の利回り差が0.83%と、17年以来の大きさとなっていた。FRBのゼロ金利政策で2年債利回りは上がりにくく、21年はさらに金利差が拡大するとの見方が優勢だ。
米長期金利は節目の1%目前にいつ達してもおかしくない状況だ。だが、コロナウイルスの変異種や目先の景気下振れ懸念、FRBの追加緩和観測など金利上昇を抑制する要因は多い。市場では金利上昇が勢いを増す時期について「天候を予想するより難しい」(シーバート・ウィリアムズ・シャンクのコード氏)との声がも出ている。