【聞き手はNQN香港 桶本典子】中国は新型コロナウイルス禍からの経済正常化で他国に先行している。代表的な株価指数の上海総合指数は、国内でコロナの拡大が深刻化した春節(旧正月)連休明けの2月3日には前営業日比で一時9%近く急落し、3月には2660まで下げた。ただ、コロナをほぼ封じ込めた夏以降は急回復し、12月に入って年初来高値(3451)を更新している。群益証券上海代表処の胡嘉銘アナリストは、21年も堅調な相場展開を予想する。
■中国GDPは8.2%成長予想、ハイテク銘柄に注目
――21年の中国株式相場をどうみていますか。
「21年は上海・深センの両株式相場ともに上昇基調を強めそうだ。上海総合指数の予想レンジは2900~4300。バイデン米大統領の誕生で米国の自国第一主義が和らぎ、再びグローバル化が強まる。新型コロナウイルスのワクチンも数種類登場し、世界経済は回復に向かうだろう」
「特に中国はコロナの抑制で先行しており、実質国内総生産(GDP)は20年に2%程度、21年には8.2%程度の成長を予想する。上場企業の業績も改善が続き、各企業の好業績は21年1~3月期まで見込める。金融改革の進展も期待できるなど、来年は好材料が多い」
――注目セクターはありますか。
「半導体や電気自動車(EV)、電子商取引(EC)などだ。中国の指導部は21年からの次期5カ年計画でハイテク産業の重要性を強調しており、これらの産業の国産化を目指すとみられる。内需振興に軸足を置きながら外需との好循環につなげる『双循環』政策により、消費関連も恩恵が期待できる。映画関連やネット医療、ヘルスケアなどにも注目している」
「景気敏感株としては、化学関連や製紙株が製品価格上昇の恩恵を受けやすい。金融株、特に銀行株と保険株は長期保有に適している」
■金融引き締めで金利上昇、元高・ドル安も進む
――20年は上場手続きを簡素化する登録制を新興企業向け市場で導入するなど、中国の証券市場の改革が進みました。
「新規株式公開(IPO)の際の登録制は現在、新興企業向け以外の市場への適用拡大を検討中で、21年に実現する可能性がある。また、金融市場の対外開放を進めることから、海外投資家は中国株投資を一段としやすくなるだろう。香港との証券相互取引の対象銘柄拡大も期待できる」
――中国人民銀行(中央銀行)の金融政策は変わりそうですか。
「人民銀の高官からは、金融緩和からの出口戦略が聞かれる。だが、足元では企業の債務不履行(デフォルト)が増えるなど気がかりなこともなお多く、当面は金融引き締めにかじを切りづらいかもしれない。ただ、(中国景気は回復基調にあることから)全体としては引き締め方向の姿勢をとるとみられ、金利は上昇しそうだ」
――足元では人民元相場が対米ドルで6.5元台と、およそ2年半ぶりの元高水準で推移しています。
「21年は1ドル=6.0~6.8元程度での推移を予想している。米中貿易摩擦による元安局面から脱しているうえ、コロナ禍からの中国経済の回復先行、金利上昇など支援材料が多く、海外から中国への資金流入が期待できる。人民銀も一定程度の為替変動を容認するとみている。人民元相場は今年に比べ、一段と上昇基調を強めることになりそうだ」
<胡嘉銘氏の略歴>
2006年に群益証券に入社。現在は同社上海代表処リサーチ部門のマネジャーを務める。