【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】2020年の外国為替証拠金(FX)取引額は、店頭FX52社の合計で6364兆円と過去最高を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大で金融市場が大荒れとなった20年3月の商いが突出して多く、FXの個人投資家「ミセスワタナベ」は、荒い値動きを収益機会とみて果敢に取引に参加した。
■大統領選の11月が2番目に
金融先物取引業協会が1月18日に公表したデータをもとにまとめたところ、20年の全通貨ペアの取引額はデータを遡れる09年以降で最高だった。これまでは15年の5570兆円が最も多かった。
月別でみると20年3月が1015兆円と月次で過去最高額となり、ひと月で年間の約16%を占めた。世界的な感染拡大への恐怖感でマーケットが混乱し、円の対ドル相場が一時1ドル=101円台まで急伸したのが3月だ。米大統領選のあった同11月のFX取引額も627兆円とこの年で2番目に多い月となった。
手数料(スプレッド)の引き下げ競争も売買高を押し上げた。米ドルと円の取引では0.2銭から0.1銭へと引き下げる会社が多かった。「株価の上昇で得た収益をFXに振り向ける動きもあったのではないか」(ワイジェイFXの遠藤寿保氏)という。昨年4月以降の株高とFX取引の活況が相乗効果をもたらした面もあるようだ。
■豪ドルは高いボラティリティー
通貨ペア別でみると、最も取引金額が多かったのは19年に続き「ドル・円」で、全体に占める比率は6割を超えた。増加が目立ったのは「オーストラリア(豪)ドル・円」で、19年の2.4倍の取引金額である497兆円に膨らんだ。外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は「20年は豪ドル相場のボラティリティー(変動率)の高さが注目された」と話す。
※20年始からの米ドル・円と豪ドル・円の推移
主力である円の対ドル相場は、日米金利差がなかなか広がらず、21年は大きな変動が見込めないとの予想が優勢だ。3月に短期間で思わぬ取引急増につながった20年に対し、21年はミセスワタナベが腕を振るう場面は減るかもしれない。
<金融用語>
ミセスワタナベとは
ミセスワタナベとは、外国為替市場で、日本の小口の個人投資家のこと。日本の為替市場で、昼休み時間帯などに、個人投資家のFX取引が市場を動かす要因となったことがあり、日本の個人の代名詞として「ワタナベ」が英国で使われ始めたのがきっかけ。