【日経QUICKニュース(NQN) 中元大輔】 オーストラリア(豪州)の長期金利が上昇(債券価格が下落)している。金融仲介会社タレットプレボンによると指標となる10年物国債の利回りは4日に1.2300%と2020年3月以来、11カ月ぶりの高さとなった。豪州は主要国のなかで景気回復で先行しており、長期金利を押し上げている。
■緩和延長でも金利上昇
中央銀行である豪準備銀行のロウ総裁は2日、「国内総生産(GDP)は従来予想より早い21年半ばまでに、19年末の水準に戻る」との見通しを示した。「財政出動と金融緩和の拡大が功を奏した」(第一生命経済研究所の西浜徹氏)とされ、早期の景気回復への期待は高まる。新型コロナウイルスの感染者数が抑えられているのも追い風だ。
豪準備銀は2日、4月半ばまでとしていた国債などの資産買い入れを延長し、追加的に1000億豪ドル分を購入すると決定した。緩和延長は金利の抑制要因にもなりうるが、景気回復を後押しする効果に投資家の関心が向かっている。このため、長期金利の上昇基調は続いている。
■日本マネーのイールドハント
日本国債に比べて高い利回り水準に、日本の投資家は熱い視線を注ぐ。財務省の対外証券投資によると、20年4~11月期に国内勢は豪州の中長期ソブリン債(国債・政府機関債・地方債の合計)に対し約3兆3500億円の買い越しとなった。買い越し幅は前年同期のおよそ21倍となった。市場には「生命保険会社のマネーが流入している」(ANZ証券の高原弘行氏)との見方がある。
南半球の豪州では夏がもうすぐ終わり、これから冬に向かう。低く抑え込んでいるコロナ感染者数は増加しかねない。雇用維持を目的とする措置「ジョブキーパー・ペイメント」は3月が期限となる予定だ。ピッチの速い景気回復に陰りがみえれば、長期金利の上昇に歯止めがかかることも考えられる。