世界最大の資産運用会社であるブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は1月26日、投資先企業のCEOに送った毎年恒例のレターの内容を公表した。昨年に引き続き、気候変動への対応やサステナビリティ会計基準審議会(SASB)および気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った情報開示を求める一方、ネットゼロ経済への移行と人種間の不平等の是正に言及した。
ネットゼロ経済への移行については、変化に迅速に適応できない企業は企業価値が低迷し、ステークホルダーの信頼を失うとした上で、企業に自社のビジネスモデルをネットゼロ経済と整合させるための計画を開示するよう要請した。また、投資家がESGリスクを評価するためには一貫性があり、質が高く、かつマテリアルな情報開示が必要であるとし、SASBおよびTCFDに基づく情報開示を推奨している。上場企業だけでなく、規模の大きい非上場企業も積極的にこうしたグローバルな開示基準に基づく情報開示をするべきとした。
フィンクCEOはまた、パンデミックの影響が人種間の不平等を含む構造的な格差を助長させているとし、多様な人材の能力を最大限に活かそうとしない企業は、顧客や地域社会の期待に応えられず、株価もアウトパフォームすることは難しいとした。その上で、ダイバーシティ、平等、インクルージョンの向上に向けた長期的な人材戦略について情報開示するよう企業に期待を寄せた。
昨年12月、同社は2021年のグローバルなエンゲージメント重点分野を「取締役および従業員のダイバーシティ」「主要なステークホルダーとその関心事項の理解」「2050年ネットゼロ目標とビジネスの整合」の3つと定めた。3点目については、同社も参画する、気候変動対応を求める機関投資家イニシアチブClimate Action 100+(CA100+)も、ターゲット企業に対しネットゼロ戦略策定を求める動きを強化している。2050年までにポートフォリオの温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロにすると表明するアセットオーナーのイニシアチブNet-Zero Asset Owner Alliance (NZAOA)や、そのアセットマネージャー版としてNet-Zero Asset Managers Initiativeも発足しており、金融および企業双方のネットゼロ目標と達成のための戦略に注目が高まる。(QUICK ESG研究所 アナリスト 平井采花)