【日経QUICKニュース(NQN) 神能淳志】新興国を中心に金融政策の緩和姿勢に変化が出ている。ロシア中銀は金融緩和を引き締める「タカ派」方向へとかじを切り始めた。新型コロナウイルスの感染拡大で通貨安が進んだ新興国ではインフレへの懸念が高いが、ロシア中銀の動きはコロナ後を見据えた正常化への布石と言えそうだ。
■ディスインフレはもはや脅威にあらず
ロシア中銀は12日、4会合連続で主要な政策金利を年4.25%で据え置くと決めた。市場で注目されたのは政策金利を維持したことではなく、ナビウリナ総裁の発言だ。同日公表した総裁の声明では「2021年は『(物価が低迷する)ディスインフレ』のリスクはもはや優勢ではない」と強調。「これ以上の追加緩和はインフレのリスクを増大させる」とし、物価上昇を懸念して事実上の緩和打ち止めを宣言した。
ナビウリナ総裁の「タカ派」発言を受け、英バークレイズはロシア中銀が4~6月期に利下げするとの予想を撤回。利下げによる景気刺激をせず、10~12月期に0.25%の利上げに動くとみる。バークレイズ証券のラムスレン・シャラブデムベレル氏は「ロシアのタカ派姿勢はトルコなど他の新興国と様相が違う」と話す。
ロシア中銀が緩和打ち止めを宣言したのは、他の新興国で散見され始めた通貨防衛やインフレ対策ではなく、あくまで「金融政策の正常化」の流れの一環だ。ナビウリナ総裁は足元の経済情勢を巡り、昨年後半にかけた行動規制が前回ほど厳格でなかったことなどを理由に「予想以上に良い結果となった」と評価した。原油価格の上昇もあって内外需の回復に伴い「以前に想定していた22年半ばではなく、今年後半にも経済がコロナ前水準に達する可能性がある」という。
■利上げの動き
新興国ではトルコを筆頭にブラジルや南アフリカなど政府の財政悪化や外貨準備高の減少で、インフレに拍車をかける通貨安を阻むため利上げせざるを得ないとの予想が多い。同じ新興国でも「ロシアは労働市場が崩れず、賃金も上昇している。来年辺りから経済活動が正常化してくれば、新興国ではポーランドなどでも利上げの動きが出てくるのではないか」(ラムスレン氏)。
先進国の中銀も緩和強化に向けた動きは乏しい。一部報道で突如湧いた日銀によるマイナス金利の深掘り観測は「3月の点検で声明の表現を変えたとしても実現するとみる債券市場関係者がほぼいない」(野村証券の中島武信氏)のが実情だ。点検が緩和後退と受けとめられるリスクに配慮した策との見方もあるが、国債や株価指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れを柔軟にすれば結果的に購入する量の減少につながり、それを緩和姿勢の後退だと受けとめる向きは少なくない。
米連邦準備理事会(FRB)を巡っては「6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的金融緩和の縮小(テーパリング)に向けた議論の示唆がある可能性は高い」(大和証券の岩下真理氏)との声もある。15日は日経平均株価が約30年半ぶりに3万円の大台を回復する記念日となったが、ポストコロナは中銀の政策転換を伴うことを忘れない方が良さそうだ。