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空売りとは何か 仕組みを分かりやすく解説、空売り規制やリスクヘッジについても紹介

記事公開日 2022/11/10 15:00 最終更新日 2024/6/27 14:12 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 金融コラム

(この記事は2021年4月23日に公開したものを再構成しました)

【QUICK Money World 辰巳 華世】株式取引には、買いから始まる取引の他に、売りから入る取引、「空売り」があります。相場下落局面でも利益が狙える信用取引の一つです。今回は「空売り」について、仕組みや空売り規制、取引の流れやメリット・デメリット、「空売り」による損失を抑えるヒントなどを分かりやすく解説します。

■空売りとは

空売りとは、信用取引の一つで、手元に持っていない株式を証券会社から借りて売り、決済期日までにその株式を市場で買い戻して証券会社に返し、その差額で利益を狙う取引です。

「空売り」を理解するために、ここで株式取引に関する用語の確認をしましょう。押さえておきたいワードは、「現物取引」、「信用取引」、「信用買い」、「信用売り」、「空売り」、「信用売り残高」の6つです。

まず、一般的に通常の株式売買のことを「現物取引」といいます。現物取引では、自分の口座にある資金で株式を買うことから始まり、その株式を売ることで利益を得ます。

一方で、「信用取引」という取引があります。信用取引は、一定の審査を経て証券会社から「信用」を得ることでお金や証券を借りて株式を売買する仕組みです。具体的には、現金や株式などを担保として証券会社に預けることで、資金や株式を借りて取引を行う投資です。預けた担保の評価額の約3.3倍の取引ができます。例えば100万円を預けると約330万円分の取引ができることになります。自分の持っている資金以上の取引ができるのも信用取引の特徴です。

信用取引は、お金を借りて株式を買う「信用買い」に加え、株式を借りてその株式を売りに出す「信用売り」の2つの取引があります。「売り」から取引を始められることは信用取引の大きな特徴です。「信用売り」と「空売り」は同じ意味です。空売りの中には、厳密には「信用取引以外の空売り」も含まれます。これは、証券会社を経由した信用取引ではなく、株主から株券を借りて行う「売り」のことを指します。今回説明する「空売り」は、信用取引の「売り」から入る取引についてです。

では、ここから「空売り」の仕組みについて解説します。「空売り」は、株式を借りてきて売るため、株式を保有していなくても売りから入ることができます。話をシンプルにするために、手数料や税金などは省きますが、例えば1株500円の株を空売り注文し、株価下落後300円で買い戻しができれば200円が利益になります。

もう少し丁寧に説明すると、借りた株式を500円で空売り注文すると投資家には500円の売却益が入ります。その後、株価が300円に下落した時、その500円のうち300円を使ってその株式を買い戻します。売却額500円から買い戻し額300円を引いた200円が投資家の手元に残り利益となります。買い戻した株式は証券会社に返します。

反対に空売り後に株価が上昇した場合は、上昇した分が損失となります。株価500円で空売りし、その後株価が700円に上昇。空売りで入った売却額500円に差額200円を足して株式を買い戻す必要があり、この200円分が投資家の損失になります。

ちなみに、空売りされたまま、まだ買い戻されていない状態の売り建ての残高のことを「信用売り残高」と言います。売り残と略されることもあります。取引している証券会社の取引画面から確認することができます。後述しますが「制度信用取引」の場合、空売りは、期限の6カ月以内に買い戻さなければならないルールなので、信用売り残高は、株価の変動要因になることがあります。なので、この指標を気に留めておくことは大切です。

「空売り」は、手持ち資金以上の大きな額で、「売り」から取引を始められる特徴があります。大きく利益が出る可能性もありますが、思うように相場が動かなければ大きな損失を被る可能性があるハイリスク・ハイリターンな取引です。そのため、信用取引には信用取引用の口座開設が必要で、信用取引をするには投資経験など一定の審査があります。

■空売り規制とは…価格規制、残高報告、公募増資

空売りをする投資家が増えると相場が下落します。空売りによって株価をわざと下落させ利益を得ようとしたり、極端に株価の下落を加速させるような取引を防ぐ目的で、空売りには金融商品取引法と、その施行令で定められた規制や制限があります。2020年3月の新型コロナウイルス拡大により株式相場が急落した局面では麻生太郎財務・金融相が更なる市場の混乱を防ぐため空売り規制の監視を強化すると発表しました。

空売り規制では、株価が前日より10%以上下落した時は、直近の株価以下での空売りが禁止されます(「価格規制」と呼びます)。この規制は10%以上下落した瞬間から翌日の取引が終了するまで価格規制が続き、翌々日には価格規制なしに戻ります。ただし、10%以上下落した日が連続した場合は価格規制が連続してかかります。

<10%以上の下落で発動する「価格規制」の詳細>

価格の推移 説明 具体例
100円→101円 株価上昇局面なので、直近公表価格(101円)未満の空売りは禁止される 102円の空売り 可
101円の空売り 可
100円の空売り 不可
102円→101円 株価下落局面なので、直近公表価格(101円)以下の空売りは禁止される 102円の空売り 可
101円の空売り 不可
100円の空売り 不可

出所:東京証券取引所ホームページを参考に作成

また、発行済株式数の0.2%以上の空売り残高がある場合、該当する投資家は証券会社経由で取引所に残高情報を報告する義務があります。そのうち同0.5%以上の残高があるものについては取引所が公表します。

これらの空売り規制の対象は51単元以上の新規空売り注文が対象です。個人投資家が50単元以下の空売り注文を出す際には適用外になります。50単元とは100株単位の株式であれば5000株、1000株単位であれば5万株ということです。

証券会社のホームページなどを見ると、空売り規制銘柄という項目があります。空売り規制銘柄には、基準価格から10%以上下落したことで空売りの価格規制がかかっている銘柄などが載っています。この他に、株を借りることができず空売りができない銘柄や、その証券会社の信用取引で取り扱いをしていない銘柄などが載っています。

加えて、2011年12月に金融商品取引法施行令の改正が行われ、公募増資に関連する空売り規制が施行されました。企業が増資を公表した後、新株等の発行価格が決まるまでの間にその企業の株を空売りした場合、増資によって取得した有価証券によって空売りを決済してはいけないという規制です。

 

■空売りの流れ

個人投資家が空売りをするには、証券会社で株式取引をする口座を開設したうえ、信用取引口座の開設が必要になります。信用取引は、証券会社からお金や証券を借りることになるので、一定の審査が必要になります。審査を通過すると信用取引の口座が開設され、証拠金を入金し取引が可能になります。 

信用取引の種類

「信用取引」には制度信用取引一般信用取引の2種類があります。

まず、制度信用取引とは、証券取引所が金融商品取引所等の規定によって、返済期限や売買する銘柄を決めている取引です。返済期限は原則6カ月となっています。制度信用取引では、売り方は逆日歩を支払わなければならないこともあります。

証券取引所では、流通株式数、株主数、売買高などいくつかの項目について一定の基準をクリアした銘柄を、信用銘柄や貸借銘柄に選定しています。このうち空売りができるのは貸借銘柄に指定された銘柄になります。毎月5日頃に証券取引所が公表します。東証プライム上場銘柄のうち大半は貸借銘柄に指定されています。貸借銘柄に指定されると、仮に証券会社が空売りに必要な株数を調達できない場合に、証券金融会社が株式の調達を融通してくれる銘柄です。証券金融会社とは、制度信用取引が円滑に進むために、証券会社に必要な株式や資金を貸し付ける貸借取引を主要業務としている会社です。

次に、一般信用取引とは、証券会社と投資家の間で返済期限や金利、貸株料などを独自に定められる取引です。空売りの対象となる銘柄も証券会社によって異なります。返済期限は証券会社によって異なりますが、3年など制度信用取引の6カ月に比べると長めに設定されています。一般信用取引では逆日歩は発生しません。

制度信用取引と一般信用取引のどちらで取引するか決めたら、空売りする銘柄を選択し、新規の売り注文をします。売り注文が約定後は、決済期日までに返済するための買い注文をします。株価が下落していれば、その差額が利益となります。もし、空売りした株の現物株を別で保有している場合、現物株で返済(現物返済)することも可能です。

■空売りのメリット

空売りの一番のメリットは相場下落局面でも利益を狙えることです。現物取引の場合は買い注文からしか取引できないので相場が下落している時は投資がしにくいですが、空売りでは株価の下落を予測して取引することができます。信用取引の一つなので、自分の資金以上の大きな取引をすることが可能です。

また、空売りをリスクヘッジとして使うことができます。通常、保有する現物株の株価が購入時より下落すれば、株価の上昇を待つか損切りすることになりますが、空売りをしておけば相場下落中に空売り分の利益が発生し、損失を軽減することができます。優待取得目的でどうしても一定期間保有しなければならない場合などに利用されるケースがあります。

■空売りのデメリット

空売りにはデメリットもあります。空売りは株価下落により利益を得る取引ですが、相場が予想に反して上昇した場合、損失が発生します。株価下落は下限が0円以上は下がらないので、空売りの利益の上限は限定されますが、株価上昇の場合、上昇の天井がないため損失が膨らみすぎるリスクがあります。つまり、空売りの損失は理論上、無限大ということです。

空売りした銘柄の株価が上昇し損失を抱えた場合、いつか株価が下落するだろうと期待してそのまま様子を見ることが難しいこともあります。信用取引では、損失が一定以上に膨らんでしまった場合、追加で担保を差し入れる追加保証金が発生します。これを「追証」と呼びます。追証が発生すると投資家は追加で資金を差し入れる必要があり、支払えない場合は、強制的に決済され損失が確定し、不足額の委託保証金を支払う必要もあります。

また、空売りには手数料がかかります。通常の売買手数料に加え、株式を借りてきて売るので株式を借りる貸株料がかかります。時に、信用売りが活発になり証券会社が貸し出せる株式が不足することがあります。この時、証券会社は他から足りなくなった株式を調達する必要があり、この調達費用を投資家が負担する必要があります。この手数料を「逆日歩(ぎゃくひぶ)」や「品貸料(しながしりょう)」とも言います(なお、この「逆日歩」は制度信用取引でのみ発生する場合があり、一般信用取引ではかかりません)。1日毎に貸株料や逆日歩が発生するので、株価の下落を待ち、長期間返済しないことは思いがけないリスクにつながります。

誰でも信用取引をできるわけではありません。信用取引はハイリスク・ハイリターンな取引なので、信用取引の口座開設には投資経験など一定の審査が必要になります。

 

■損失を抑えるためのヒント…「逆指値」とは

空売りをする場合、損失を抑えるために「逆指値注文」を入れておくことができます。空売りした株の価格が予想に反して上昇した場合、指定した株価に到達した際に株式を自動で買い戻す注文方法で、空売りの損失を抑えることができます。つまり、損切りです。

ちなみに逆指値注文とは、買いであれば「相場上昇時に指定した価格以上になれば買い」、売りであれば「相場下落時に指定した値段以下になれば売り」となる注文です。通常の指値注文の「指定した価格以下で買い」や「指定した価格以上で売り」とする注文とは「逆」の注文方法なので「逆指値注文」と呼ばれています。

通常の「指値注文」であれば、例えば株価200円の時に「300円で1株買い」の「指値注文」を出せば、株価上昇途中で250円になった場合でも約定します。つまり300円以下で約定します。

逆指値注文は、例えば株価200円の時に「300円で1株買い」の「逆指値注文」を出せば、株価が300円以上にならないと約定しません。

空売りの損失を抑える方法としては、銘柄選別をする際に短期間で価格変動が激しい銘柄で空売りをしないというのもあります。成長が期待される分野や業界などで空売りをする時は、株価が逆に大きく高騰する可能性もあるので注意が必要です。

■まとめ

空売りは、相場下落局面でも利益を狙える取引方法です。空売りをする時は、株価変動による損失のリスクも踏まえて上で取引をしましょう。

 

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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6/500
 

2021/7/2 12:22

3コメント
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c.hisada.0
・銘柄選別をする際に短期間で価格変動が激しい銘柄で空売りをしない
・成長が期待される分野や業界などで空売りをする時は、株価が逆に大きく高騰する可能性もあるので気を付ける

2021/7/2 12:25

コメント
c.hisada.0
注意ポイント:空売りには手数料がかかる(株式を借りてきて売るので株式を借りる貸株料)

2021/7/2 12:28

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2021/4/29 17:26

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