【QUICK Market Eyes 川口究】2020年は新型コロナウイルス感染拡大下でブラック・ライブス・マター(黒人の命は大切だ)運動や従業員の労働環境などESGの「S」に注目度が高まった年であったが、株式市場における評価にも寄与した。今年も「S」で高い評価を得ている企業の株価は堅調だ。日本では「ヒト」に焦点を当てた政策の議論が進み、「S」の側面に注目が集まりやすい。一方で人権問題から生じるリスクへの警戒も怠れない。 市場での評価に寄与する「S」 「S(社会)」で高い評価を得ている日本企業が市場でも評価されている。独ESG(環境・社会・企業統治)評価会社アラベスクSーRay社の「S」...
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「BLMはダイバーシティ&インクルージョンの観点から語られるようになり、制度的な差別や不平等解消への取り組みが企業のダイバーシティ配慮と活用にすり替えられている」と警鐘を鳴らす研究者もいます。よくある「すべての差異を大切に」という肯定的で耳触りのいいメッセージは、ときに既存の差別構造に異議を申し立てるのではなく、あたかもそうした問題はすでに解決されているか、存在していないという平等幻想を作り出す(英研究者)という指摘があります。(自社のサプライチェーンと関係のある)海外での人権問題などに対して静観することは、差別構造の温存に加担しているとも考えられるかもしれません。そう思うと、企業のESG評価が本当に構造的なものにアプローチしているのか、それとも自社に都合の良いダイバーシティの推進にとどまっているのかを市場が評価してもいいのではとも思いますし、取組の内実がESGスコアに正しく反映されてほしいと思います。何にせよ、ESGへの取り組みの深度と株価が連動するというファクトが積み重なっていくことでESG投資は進んでいくと思いますので、こうした記事が発信されていくことは大切なのだと思います。