【NQNニューヨーク 川内資子】12月13日の米国債市場で長期債相場は3日続伸し、長期金利の指標である10年物国債利回りは前週末比0.07%低い(価格は高い)1.41%で終えた。14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて、米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和の縮小加速を見込んで長短期債の利回り差を縮小させる目的の長期債買いが続いた。「長短金利差の縮小を見込んだ取引がデフォルト(標準)の状態」(BMOキャピタル・マーケッツ)でFOMCを迎えることになる。
「FRBは緩和縮小を粛々と進める姿勢を示す」
「インフレを一時的だとしたのがFRB史上でおそらく最悪の予想であり、政策ミスの確率を高めている」――。独アリアンツのモハメド・エラリアン氏の12日の米CBSのインタビューでの発言が、米市場関係者の次回FOMCでの「タカ派寄り」な結果予想を後押しした。エラリアン氏はこのままではインフレ期待の上昇が加速しかねないとして「FRBはインフレ見通しの統制を再び握り、信認を取り戻すために今週から行動しなくてはならない」と述べた。
今週は世界で20近くの中央銀行が政策決定会合を開く「中銀ウイーク」だ。少し前まで主要中銀はそろって金融緩和の正常化に動くと予想されていた。だが、最近の新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大を受けて、市場では感染状況を見極めるため欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(英中銀)が緩和縮小に慎重になるとの思惑がくすぶる。
こうした中にあって「FRBは緩和縮小を粛々と進める姿勢を示す」との市場の予想は揺るがない。今回の会合でのテーパリング(量的金融緩和の縮小)の加速に言及した最近のパウエルFRB議長らの発言が支えだ。前週末発表の11月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.8%上昇と39年ぶりの高い伸びとなったのもこうした見方を後押しする。
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インフレ見通しの不透明感
ニューヨーク連銀が13日に発表した米消費者に経済見通しを聞く11月の「消費者期待調査」では、今後1年のインフレ予想の中央値が前年同月比6.0%上昇だった。上昇率は10月の5.7%から拡大し、過去最高だ。今後3年のインフレ予想は4.0%上昇と5カ月ぶりに低下した。大卒資格を持たない回答者による上昇率予想の低下がけん引したが、回答者間の答えの開きの大きさは過去最大になった。インフレ見通しの不透明感は短期・中期ともに過去最高で、落ち着く兆しのないインフレ圧力に米消費者が戸惑う様子がうかがえる。
米国での賃金事情もインフレ予想を難しくする。米人事コンサルティングのマーサーの調査では、インフレ圧力と離職率の高まりを受けて米企業は従業員に対する給与など報酬の予算を積み増している。2022年の米企業の報酬予算は11月時点で前年比3.2%増と前回8月(3.0%)から切り上がった。3.5%以上の増加を計画する企業の割合は27%と前回(13%)の2倍以上となり、ボーナス向け予算を10%以上増やした企業は25%に達した。企業が賃金増に積極的にならざるを得ない状況はインフレ圧力が簡単にはしぼまない状況を映す。
FRBによるタカ派寄り姿勢を見込んで金融政策の影響を受けやすい中短期債利回りが高止まりする一方、利上げが景気拡大を抑えるとの見方から長期債は買われやすく、長短金利差が縮小する傾向が続いている。テクニカルな長期債買いが足元の長短金利の縮小を加速させたとの見方はあるが、高インフレの見通しが変わらない限り長短金利差の縮小傾向は続く可能性が高い。
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