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資産運用の税金について確認 確定申告で使える各種控除も紹介(資産形成イロハのイ)

【QUICK Money World 辰巳 華世】資産運用で利益が出たら税金がかかります。投資における税金では、高いものだと55%の税金がかかります。今回は、投資別にかかる税金の例、税金を抑えられる制度、投資別の非課税制度・控除が適用される例、非課税で活用できる積立投資、資産運用にかかる税金はどこに相談すればよい?などについて紹介します(情報はすべて2021年末時点のものです)。

投資にかかる税金の例

資産運用で利益が出ると税金がかかります。資産運用の方法によっても異なりますが、利益が出た分に対して約20%から高いと55%という税率がかかる場合もあります。なので、資産運用をする際は自分が選択した運用方法で利益が出た場合どれくらいの税金がかかるのかを予め把握しておくことはとても大切です。ここで具体的な運用方法ごとにかかる税金を見ていきたいと思います。

株式投資、投資信託、FX

資産運用で最も身近な運用手段である株式投資では、配当金と売却時に生じた利益の約20%の税金がかかります。具体的には、配当金・売却時の利益(譲渡益)どちらにも20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%の合計)の税金がかかります。仮に100万円の運用益が出た場合、実際に手元に入ってくる額は約80万円となります。ちなみに、投資信託も株式と同じ税率です。投資信託の分配金と売却益には株式と同様20.315%の税金がかかります。日経平均先物・オプション取引や外国為替証拠金(FX)取引も同じです。

暗号資産

暗号資産(仮想通貨)の売買で得た利益は5%〜45%の税金がかかります。暗号資産は資産運用の中で最も税率が高くなる場合があります。暗号資産は、所得区分で「雑所得」に分類されます。雑所得が20万円以下であれば確定申告をする必要はありませんが、20万円を超える場合は確定申告が必要です。

暗号資産での所得含め雑所得が20万円を超えた場合、確定申告をして例えば給与所得などその他の所得と合算した「総合課税」で税率が決まります。同じ雑所得でも、FXや先物といった、他の所得とは別に税額を計算する「申告分離課税」の対象ではありません

総合課税の所得税率は5%から45%まで7段階に区分されています。所得金額が194万9000円までの場合は所得税率は5%ですが、4000万円以上で45%(控除額479万6000円)がかかります。それぞれの税率で下記の様に控除額が決まっています。これに住民税10%が一律で課され、最大で55%の税率となります。

<所得税率の速算表>

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

※出所:金融庁

例えば、その他の所得はなく暗号資産で5000万円の利益が出たとします。その場合、5000万円×0.45-479万6000円=1770万4000円の税金を払う必要があります。手取りの利益額は約3200万円となります。この様に5000万円儲かったと思っていても実際の手取り額は想像以上に小さくなりますので、自分の資産運用で利益が出た場合どれくらいの税金がかかるのかは予め把握しておくことが大切になります。利益を出した翌年の収益状況によっては、巨額の税金を払うキャッシュがなくなっている、という状況も起こりえます。

暗号資産の税金で注意したいのは、所有している暗号資産を売却したとき、商品の購入で利用したとき、他の暗号資産に交換をしたとき、利益が出れば課税されることです。②や③のパターンでは課税されないと勘違いするケースがあるため、ご注意ください。また、暗号資産は値動きが激しいため、基本的に、長期の資産運用には向かないとされています。

<関連記事>
暗号資産(仮想通貨)とは 税金・確定申告は必要?価格変動の仕組みと取引方法について解説

不動産投資

不動産投資にも税金がかかります。不動産に関する税金は複雑です。個人の場合と、不動産賃貸業を事業として行う場合では税金が異なります。今回は個人で居住用不動産に不動産投資をした場合の税金について見てみましょう。

 

不動産は購入時、居住時、売却時にそれぞれ税金がかかります。例えば不動産を購入した時には不動産取得税、印紙税や登録免許税、居住時には固定資産税など、賃貸として他人に貸し出した場合は所得税、住民税、売却時にも所得税、住民税などが必要となります。購入時、売主が不動産業者のような課税事業者である場合は、建物や仲介手数料に対して消費税10%が課税されます。

不動産を売却し利益が出た場合、条件によって約14〜40%の税金がかかります。保有期間が5年以下の場合、短期売買とみなされ短期譲渡所得として所得税約30%、住民税9%と税率が高く設定されています。5年超の期間保有している場合は、長期譲渡所得として所得税15%、住民税5%となっています。

ただし、居住用の不動産の場合、所有期間に関係なく3000万円の特別控除があるので、不動産を売却したことによって生じた所得である譲渡所得(売却益)が3000万円以下であれば非課税(3年に1回、各種条件あり)になります。

また、居住用不動産の保有期間が10年を超える場合、売却益6000万円までの部分は所得税10.21%、住民税4%、6000万円を超える部分は所得税15.315%、住民税5%の税率の税金が発生します。不動産の税金は所有期間などによって変わるので売却する時に注意しましょう。

<不動産投資における主な税金(各種控除、税率・軽減税率は割愛)>

不動産取得時 印紙税 契約書に課税。記載金額に応じた印紙を貼りつけることで納税
登録免許税 1.建物保存登記
2.建物移転登記
3.土地移転登記
4.抵当権の設定登記
不動産取得税 不動産取得時に固定資産税評価額に応じて課税
消費税 売主が課税事業者の場合、建物や仲介手数料に課税
不動産保有時 固定資産税 土地・建物の保有に課税
都市計画税 土地・建物の保有に課税(都市計画区域に限る)
所得税 家賃など不動産所得に課税(総合課税)
住民税 家賃など不動産所得に課税(総合課税)
不動産売却時 所得税 売却益に課税:長期譲渡(所有期間5年超)
売却益に課税:短期譲渡(所有期間5年以内)
住民税 売却益に課税:長期譲渡(所有期間5年超)
売却益に課税:短期譲渡(所有期間5年以内)

※出所:金融庁サイトから作成

税金を抑えられる制度

NISAとiDeCo

資産運用の大きな負担となる税金ですが、税金を抑えられる制度もいくつかあります。例えば株式や投資信託の運用で活用できる少額投資非課税制度(NISA)があります。NISA口座で購入した金融商品から得た利益は、一定期間税金がかからなくなります。そのためNISAは非課税口座とも呼ばれています。自分で準備する年金制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)でも税金が抑えられます。iDeCoでは、掛け金、運用益、そして給付を受ける時に、税制上の優遇措置があります。

NISAとiDeCoの詳細については、こちらの記事もご覧ください。

<関連記事>
非課税制度のNISAを紹介 いつまで利用可能?つみたてNISAとの違いは?デメリットや注意点も解説
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは何か 拠出上限額やNISAとの違い、節税メリットなどをわかりやすく解説

損益通算と損失繰越

通常の株式売買や投資信託、FX取引などでは「損益通算」を利用することで税金を抑えられます。損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺できることです。損益通算では、ある銘柄で損をした場合、他の銘柄で出した利益から損失を差し引いて(相殺して)、その分だけ税金を減らすことができます。もし損益通算してもまだ損失がある場合は、翌年以降3年間損失を繰越控除することができます。損益通算や繰越控除を利用する場合は申告分離課税などで確定申告をする必要があります

株式の損益は、投資信託の取引で発生したと損益と通算することが可能です。投資信託の取引で発生した利益を、株式取引で発生した損失で相殺することができます。

一方、FXは、日経225先物などの株価指数先物取引や取引所CFD(くりっく株365)、さらに商品先物取引といった、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算が可能です。FXで出た利益を、日経225先物の取引で出た損失で相殺できるということです。

暗号資産は他の「雑所得」、たとえば他の暗号資産の取引と損益通算できますが、申告分離課税の対象となる雑所得とは損益通算できません。また、損失額の翌年への繰り越しもできないので、注意してください。

 

投資別の非課税制度・控除が適用される例

資産運用の利益に対して税金はつきものですが、控除が適用される場合もあります。それぞれどの様な控除があるのか見ていきましょう。

青色申告での控除

不動産投資の場合、個人と不動産賃貸業を事業として行う場合では税金が異なります。今回は事業として不動産賃貸業をする場合の税金についてご紹介ます。不動産賃貸を事業として行う場合、分離課税ではなく総合課税で課税されます。この場合、青色申告を活用することで節税することができます。青色申告は、事前に申請が必要となる申告方式で、複式簿記による帳簿付けなどが必要となりますが、最大65万円の控除ができます。不動産賃貸業での所得が大きくなった場合は、法人を設立しそちらに資産を移管して事業をするのも一つの手かもしれません。個人の最高税率よりも法人の方が税率が低いので節税できる場合もあります。(参考:金融庁「青色申告特別控除」

総合課税による配当控除

株式の配当は、総合課税分として確定申告をすることで配当控除を受けることができます。一般的に配当は企業の法人税を引いた後の利益を株主に分配しているものです。個人が受け取る際に所得税がかかるので、二重課税となってしまいます。これを回避するために確定申告することで配当控除を受けることができます。課税総所得が1000万円以下の場合、配当控除は所得税額からは配当所得の金額の10%、住民税額からは配当所得の2.8%が控除できます。なお、配当控除を受ける場合には、配当所得での損益通算は使えません。

非課税で活用できる積立投資

積立投資に向いている非課税制度が前述したiDeCoNISAです。iDeCoは、掛け金、運用益、そして給付を受ける時に、税制上の優遇措置があります。掛け金は全額所得控除になります。NISAもNISA口座で購入した金融商品から得た利益は、一定期間税金がかからなくなります。iDeCoは年金資金作りにNISAは様々な目的に向けた資産運用に活用できます。それぞれの細かい制度については下記の記事で確認してみて下さい。

<関連記事>
非課税制度のNISAを紹介 いつまで利用可能?つみたてNISAとの違いは?デメリットや注意点も解説
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは何か 拠出上限額やNISAとの違い、節税メリットなどをわかりやすく解説

資産運用にかかる税金はどこに相談すればよい?

資産運用に税金はつきもので、大きな負担となります。資産運用をする時には、自分が選択した運用方法で利益が出た場合どれくらいの税金がかかるか把握することはとても大切です。また、どのような控除を受けることができるのかや、場合によっては節税の対策をすることも必要です。

自分の利益がどの所得に該当するのかなど確定申告する場合も税金はとても複雑です。なので、専門的な意見を聞くことも一つの良い選択です。税金などの取り扱い方を相談できるファイナンシャルプランナーや税金対策を考慮した資産運用の相談、プランの提案ができる税理士などに相談してみると良いでしょう。

まとめ

資産運用に税金はつきものであり、どれくらい税金がかかるのか、どのような控除があるのか予め把握しておきましょう。自分1人では考えられない場合は、ファイナンシャルプランナーや税理士に相談することもおすすめです。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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