今日は、石野真子さんの♪狼なんか怖くない♪(1978年)をイメージしながら書いています。阿久悠作詞、(われらが)吉田拓郎作曲です。阿久さんは『三匹の子ぶた』から着想されたのでしょう。「いま風」に言えば、歌謡曲の世界と(いわゆる)ニューミュージックの世界のコラボレーションでした。
脱線すれば(→ここが言いたいところですが)、拓郎自身はのちに、阿久悠さんと加藤和彦さんから♪純情♪という曲をもらい、とても大事に歌っています。前に進むための勇気をもらえる歌で、私は週に10回は聴きます。この歌詞の「きみ」は「追い求める理想の自分」ではないかと思います。
阿久悠さんは著書の中で、「この詞には、ぼくのキイワードがいっぱい入っている」「加藤和彦の曲は、ジョージ・ハリスンの『マイ・スイート・ロード』を思わせるもので、いい気分のものであった」と書いています(阿久悠著『なぜか売れなかったぼくの愛しい歌』より)。
アコースティック・ギターの後に、ジョージの代名詞であるスライド・ギターが入るあたりがそう感じさせたのでしょう。ご興味のある方は(オリジナル(1994年)のレコーディングではなく)最近のライブ・バージョンやセルフカバーアルバム『Again』(1曲目)で聴かれてみてください。3曲目の♪たえなる時に♪も最高です。
冒頭の歌の歌詞に沿うならば、①「(平均的な)景気後退で何が起きるのか」や「景気拡大もあれば景気後退もある」ということを知っていれば、あるいは、②資本市場をよく理解し、これを大好きであれば、「景気後退なんか怖くない」となるでしょう。今日も、先週に続き、超長期のデータを見ていきます。
織り込みどおりなら、米10年金利の「上限」は3.8%程度:あと少し、もう少し
さて、先週は、米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の利上げを決定しました。【次の2つの図】では、①利上げ決定と同時に出されたFRBによる政策金利の見通しと、②直近の金融市場の利上げ織り込み(フェデラルファンド金利先物)をそれぞれ見ています。
「年内の利上げ」については、①FRBの場合、7月に0.75%、9月に0.5%、11月に0.25%、12月に0.25%といったスケジュール感になります。その一方で、②金融市場は、7月に0.75%、9月に0.75%、11月に(ほぼ)0.50%、12月に0.25%の利上げを織り込んでいます。
「利上げの打ち止め水準」については「3.8%程度」でほぼ一致しています。他方で、「利下げ開始のタイミング」については、①FRBは「2024年のどこか」で、②金融市場は「来年5月頃」と見込んでいます。必ずしも「利下げ=景気後退」ではないものの、多くの場合においてはそうであり、両者から、いわば「悲観的な見通し」が発せられているわけです。大きな利上げ幅ですから、悲観的になっても不思議ではありません。
これらの情報が正しいと仮定し、米国債利回りの「上限」について考えてみます。
【次の図】のとおり、まず、①利上げ期の2年金利【青色】は、政策金利【灰色】に「タッチしない」ように上昇していき、利上げの打ち止め前後で(利下げを先読みして)政策金利を下回ります。したがって、2年金利の「上限」はおおむね、政策金利の打ち止め水準です。
また、②10年金利【オレンジ色】は、利上げの終了が近づくと(景気後退を織り込んで)「逆イールド」になる(=10年金利の水準は2年金利を下回る)わけですから、10年金利の「上限」もおおむね、政策金利の打ち止め水準と考えられます。
したがって、(現在の織り込みが正しいと仮定すれば)2年金利も10年金利の上限も3.8%程度と考えることができます。
10年金利については一度、3.49%まで上昇しているため、上昇余地は限られます。
長短金利が再び逆転
加えて、先週、2年と10年の米国債利回りは、4月1日以降、再び逆転しました(→日中のみ)。
4月にお伝えしたとおり、データが取れる限り(1962年以降)で見て、過去10回の「逆イールド」のうち、8回が景気後退につながっています。その8回を見ると、逆イールドから景気後退までの期間は「平均15.6カ月」です。
上記のとおり、フェデラルファンド金利先物を見ると、「来年5月頃からの利下げ」が織り込まれています。必ずしも「利下げ=景気後退」ではないものの、多くの場合においてはそうであり、金融市場は「パターン」どおり、「利上げ開始や逆イールドの後、1年~2年くらいで利下げや景気後退が生じる」と見込んでいます。また、最近では、米国の大企業の経営者たちも相次いで、景気後退の可能性に言及しています。
「景気後退はどの程度恐れるのが、しかるべき(平均的な)恐れ」なのでしょうか。
景気後退時の株価はどのくらい落ちるか?
【次の図】に示すとおり、現時点で入手可能な(1871年からの)S&P 500のデータにしたがうと、景気後退前の株価ピークから景気後退中の株価ボトムまでの平均下落率は27.9%です(→景気後退に入ってからピークを付け、景気後退が終わってからボトムを付ける場合を含む)。
1871年から直近までに、米国の景気後退は「30回」あり、そのうち「28回」で株価は下落基調になっており、上記の数値は、その28回の平均値を取ったものです。残りの2回は、景気後退前から景気後退が終わる期間まで、株価が上昇トレンドにあったため、データからは除外しました(→これら2つを含めると、平均値は改善するため、保守的に除外しました)。
28回のうち、株価がピークを付けるのは平均して「景気後退入りの5カ月前」で、株価がボトムを付けるのは平均して「景気後退明けの5カ月前」でした。平均すれば、「株価は景気を先読みして動く」ということです。
今回はすでに、株価は今年1月の高値から最大で23.6%下落しています。
そう考えると、いまは、すでに大きく調整している米国成長株式を含め、特定の資産を売却することでポートフォリオのバランスを崩してしまうよりも、幅広い資産に分散をして、長期の積み立て投資を行っていくべき局面に思えます。
(補足)そんなに超長期のデータは信頼できるのか?
前回は、1913年からあるCPIのデータを使いました。今週は、1871年からの株価のデータを使いました。
超長期のデータを見る理由は、レイ・ダリオが強調するように、サイクルには10年周期のものもあれば、100年周期のものもあるためです。インフレは約50年ぶり、東西分断の開始は約70年ぶり、(米国が顕著な)国内の分断は約100年ぶりのことです。過去40年のディスインフレ期のことは当てはまらないかもしれません。今後もできる限り、長いデータを取って、一緒に考えたいと思います。
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