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ドル高いつまで?(フィデリティ投信 重見吉徳氏)

記事公開日 2022/11/9 12:00 最終更新日 2022/12/14 19:03 為替・金利 FX 米金利 フィデリティ FRB

引き続き、金融市場では「米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅を縮小する」という観測から株価が戻っています。

他方で、①10月下旬は、(FRBが好んで使う物価指数である)PCEデフレーターが前年同月比で+5.1%と伸びが拡大し、前月比でも+0.5%と高い伸びが続いていることが示されました。

「インフレが収まらず、大幅利上げ継続懸念で、株売り」となるかと思いきや、ダウ工業平均株価は828ドル上げて、6日続伸でした。当日の市況解説は「アップルの好決算」ということでしたが、筆者は「世界経済が景気後退に向かう中、超高額商品を販売する巨大企業や、インターネット広告に依存する巨大企業の業績先行きはどうなのか」と疑問に思いました。

また、②米国の3ヵ月物国債利回りと10年物国債利回りが逆転しました(3ヵ月物>10年物)。景気後退を先読みする指標がさらに揃いました。

米国の長短金利差

いまは分散のときです。

2000年当時と今回の米国成長株式

次号以降の予告:「地政学リスクと資産運用」について書きます。

10月下旬、個人投資家の皆さま向けに、「地政学と資産運用」について少し話しました。詳細は次号より掲載する予定です。

その中で、筆者は「今後の地政学リスクを考えると、資本が向かう先のひとつは米国だと考えます」とお伝えしました。1人のお客様が「そろそろ、利上げも終わりだし、米国から手を引こうと思っていたのだが・・」とおっしゃいました。

全くおっしゃるとおりで、確かに、米国がやがて景気後退に入り、利下げに転じれば、ドル円相場は20%程度下落しても不思議ではありません(1ドル=150円→1ドル=120円割れくらい)。このドル安・円高局面において安く買うために「余力を残しておくのがよい」と筆者は考えています。

さて、前回は、米国の長期金利の上限についてシンプルに考えました。今日は、ドル円レートについて少しだけ考えてみます。

ドル高はいつまで? 短期的には(やはり)金融政策を見る

【次の図】は、米ドルの平均為替レートと日米欧の政策金利の長期チャートを示したものです。1971年8月のニクソン・ショック以降、ドル高の局面は大きく見て「3回」あります。

米ドルの平均為替レートと日米欧の政策金利

月並みですが、ドル高とドル安の要因は、政策金利の差です。おおむね「米国が利上げをリードし、その水準をキープしてドル高」、「米国が利下げに転じ、金利差が詰まるとドル安」という流れです。

基本に立ち返れば、米国が利下げするときには、ドル安(円高)に幾分反転すると考えておくほうが自然です。それは、日本国内の投資家にとって資産運用の重要なポイントです。

(寄り道)ただし、より大きな流れは国際政治上の動向で動くように見える

とはいえ、1971年以降で見ると、利上げや利下げのサイクルは「3回」よりももっと多かったわけですから、「ドルの大きな流れ」を考える上では、金融政策以外のものを見ておくほうがよいでしょう。それは、国際政治上の動向であり、国際政治が経済の動きに影響を与えているように思えます。

米ドルの平均為替レート

【上の図】を簡単に整理すると、①1985年までのドル高局面は、レーガン大統領の「力による平和」戦略に基づく軍拡で、米国がソ連を追い詰めていきました。

その後、②1985年にソ連でゴルバチョフ氏が共産党書記長に就任すると、やがて米ソは軍縮へと向かい、1991年に冷戦が終結します。資本は米国から、日本やアジア、ロシアなどに向かいます。この「ドル離れ」は、東西対立の心配が不要になり(≒平和になり)、「経済重視」になったことを反映しているように思えます。

次に、③2000年までのドル高局面は、バブルに沸いた日本やアジア、ロシアなどの新興国から、生産性革命に沸いた米国に資本が還流しました。

その後、④2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟すると、中国が「大国」になる過程で、ドル安となりました。中国のWTO加盟に道筋をつけたのはほかでもない米国でした。このドル安局面もまた、中国や新興国が世界経済に取り込まれる「平和」の局面でした。

最後に、⑤2016年からのドル高局面は、米中対立(米中貿易戦争を含む)や、ロシア=ウクライナ戦争など、再び東西対立・東西冷戦となるような動きの中で、ドルへの資本還流が生じています。

簡単に言えば、西側の覇権国である米国が他の大国を封じ込めようとするときには「ドル高」となり、他の大国と融和を図ろうとするときには「ドル安」になるように思えます。

まとめれば、短期的には米国の利下げでドル安も、長期的には、農業と資源と半導体と軍事の大国である米国に資金が流入し続ける可能性があるかもしれません。

米国は準備通貨を供給する国です。これまでは、たとえ、米国経済が競争力のあるモノを生産・輸出できなくとも、輪転機を回して貨幣(ドル)を渡すだけで、世界じゅうからモノやサービスを買うことができました。誰もがドルを持つことで安心感を得られたためです。

しかし今後の米国は、準備通貨の発行に頼らずとも、農作物や資源、半導体、軍事サービスといったものの価値が(一般的な商品やサービス対比で)相対的に上がる中で、これらと交換に他国からモノやサービスを買うことができます。それはドルの力を持続させるように思えます。

(ごく簡単に)ドル円レートはいつまで上昇?

足元では、実際の為替介入と介入への警戒感でドル円相場は膠着していますが、【次の図】に示すとおり、ドル円相場と日米の政策金利差を比較すると、過去は、政策金利差がピークを付けて、しばらくした後に、ドル円相場がピークを打つ傾向が見られます。

ドル円レートと日米の政策金利差

これに沿えば、日銀が金融政策を変更しない場合、米国が利上げを打ち止めした後しばらくしてから、ドル円相場がドル安・円高に転じることになります。

米国の利上げ打ち止めはまだ先と見られますから、日銀が金融政策を変更しない限り、ドル円相場は当面のあいだ、少なくとも大幅なドル安・円高の方向には動かないように思えます。

(ごく簡単に)ドル円の上値は?

日米10年金利差とドル円相場を比較すると、現状のドル円相場は、今後の10年金利差のさらなる拡大を先取りしているように見えるものの、とはいえ、米国の10年金利が5%を超える、とまでは見込んでいないようです。

ドル円レートと日米の10年金利差

ドル円相場だけに心を奪われず、他の市場を見ると、米国の株式市場はこれほどの引き締めにも関わらず、「絶叫」にはほど遠く、「誰もが売りに回るセリング・クライマックスには至っていない」ように感じます(→積み立てなど、「買い余力」を残すほうがよいでしょう)。

ドル円相場もこれと同じで、「誰もがドル預金に走るほどの状況には至っていない」ように思えます。

そう考えると、今後、ドルの長期金利が5%を超える中で、ドル円相場も短期的には160円あたりまで上昇するかもしれません。

それは「まだ、チャンスあり」ではなく、「ドル円相場の上値余地は限られる」ということです。

(資産運用について述べれば)たとえば、ここからのドル預金は、ドル高・円安で取るというよりも、金利差に頼らざるを得ません。

むしろ、①米国の株式市場に調整の余地があり、②ドル円相場がまだ高水準を維持するのであれば、A.利回りが高く、B.景気後退を先読みして動く分、調整が早く、C.景気後退ではFRBの支援も受けて戻りが早く、D.資源関連も多い、米国ハイ・イールド債券が、分散先の一案となるでしょう。

 


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著者名

フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト 重見 吉徳

20208月、フィデリティ投信入社。農林中央金庫や野村アセットマネジメントにて外国債券の運用に従事。アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年に J.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社。個人投資家や金融機関、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。昭和の歌が好き(演歌・洋楽を含む)。


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