考えておくべき問い:最近の「資産運用は自分ひとりでできる」「インデックス・ファンドの積み立てがよい」は、過去30年の強気相場・ブームに「乗っかった」だけではないか
NISAがスタートしたのは2014年1月です。ご存じのとおり、2024年から拡充される予定です。
「拡充される」ということは、一般的な投資家の方も、そして、政官の側にも、NISAが「成功体験」として積み上がっているということでしょう。
それと同時に、日本で存在感が高まってきたのが、
- 資産運用は、インデックス・ファンドの積み立てがよい、
- 資産運用は、自分ひとりでできるものであり、アドバイザーは不要、
という2つの考えでしょう。そして、これら2つは密接に関係しているでしょう。
しかし、考えていただきたいのは、「インデックス・ファンドの積み立て投資」における成功体験とは「そこに、強気相場があった」ということにほかなりません。
「インデックス・ファンドの積み立て投資」が成功するための条件
「インデックス・ファンドの積み立て投資」が成功するための、たったひとつの、しかし必須の条件は、①株式市場「全体」が、②「右肩上がり」か「V字型」か「U字型」というふうに「尻上がり」であることです。
逆に、①株式市場「全体」が、②「右肩下がり」か、あるいは「V字」や「U字」を逆さまにしたような「尻下がり」の相場のときに、たまたま取り崩しを始めないといけない投資家は、ひどい目に遭います。
「インデックス・ファンドの積み立て投資」は、決して万能ではありません。ほかの投資と同じく、「結局、上がることが必要」です。
ここが大事ですが、「過去30年の強気相場がかなり特殊なもの」で、「次の30年では再現不可能である」とすれば、「インデックス・ファンドの積み立て投資」は長期間、実質リターンがゼロ付近をさまよう可能性が出てきます。
歴史が、すなわち、サイクルがそうした将来を予測してくれます。
「次の30年」を見通し、NISA拡充で目指したいこと
結論を先取りすれば、筆者は、NISA拡充に際し、
- 積み立て投資なら、長期にパフォーマンス・超過収益が出ているアクティブ・ファンドを含める、
- もしも「インデックス・ファンドのみで積み立てる」なら、超長期に資産運用を止めないために、対面・アドバイザーによるサポートやコーチングが欠かせない、
と考えています。
しかし、現実を見れば、上記2の、インデックス・ファンドのみで積み立てをしている投資家には、アドバイザーは就かないでしょう。
なぜなら、インデックス・ファンドは、
- 資本市場に「タダ乗り」している分、低コストであり、しかも、
- インデックス・ファンドの実質リターンは今後、長期間低迷しても不思議ではないため、
アドバイザーは、インフレ分くらいしか、顧問料を受け取れないためです。
いずれにせよ、過去10年のように「自分ひとりでできる」と決して思わないほうがよいと筆者は考えています。
まずは、「過去30年」をふりかえってみましょう。
過去30年における「資産価格の異例な上昇」
米国株式のデータは、過去150年にわたってさかのぼることができます。ここでは、その150年を30年ずつ、5つの局面に区切って、それぞれどんな動きだったのかを見てみます。
【次の図】は、過去150年における、S&P 500の「1株利益」の増加率(年率;物価調整後*)を示したものです。すると、1株利益は、大小ありますが、おおむね年率2%程度で増加してきたことがわかります。
次が問題ですが、【次の図】は、過去150年における、S&P 500の「株価」のリターン(年率;物価調整後*)を示したものです。すると、「過去30年の株価上昇率は、年率6%におよんでおり、異例に高いリターンだった」ことがわかります。
いったんまとめれば、「過去30年の株価上昇率は、同じ30年間の1株利益の伸び率と比べると、不釣り合いに大きかった」ことが示されます。この両者を結びつけるのは「バリュエーションの上昇」(=PER(株価収益率)の上昇)にほかなりません。
*ちなみに、1株利益・株価ともに、物価調整後(実質ベース)で見ている理由は、「貨幣錯覚」に陥らないようにするためです。株価が10%上がっても、物価が20%上がっていれば、購買力は低下しているため、決して喜べる状態ではなく、むしろ悲観すべき状況です。
過去30年は「次の30年では繰り返されない、超ラッキーな30年
【次の図】は、過去150年のS&P 500の株価収益率(PER)の伸び率相当分(年率;【すぐ上】で見た実質株価の上昇率から、【最初】に見た実質1株利益の上昇率を差し引いたもの)を示しています。
すると、「過去30年のPERの上昇は、その前の120年と比べて、異例に高かった」ことがわかります。同時に、その前の120年は、PERの上昇・貢献は「ほぼゼロであった」こともわかります。
PER上昇の背景は、理論で考えれば、金利の低下です。
そこで【次の図】は、過去150年の米国10年国債利回りの動き(年率ではなく、30年間の変化幅)を示したものです。すると、「過去30年の金利低下は、異例に大幅であった」ことがわかります。
「次の30年」で、金利の低下はあるのか?
そして、次にご覧いただくのが、過去150年の米国の長期金利の推移です。
短期金利も長期金利も下限に達しており、「もはや金利は低下しない」ということに多くの方が同意されると思います。
念押しをしておきますが、筆者は「金利が上がる」とは述べていません。「金利がこれ以上は下がらない」という、たったひとつの、しかし、確からしい仮定で、「過去30年のような資産価格の上昇は再現不可能であること」が示せます。
「過去30年」が通用しないことはほかにもあります。
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