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新株予約権とは? 種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説!

記事公開日 2023/2/10 18:00 最終更新日 2023/2/10 18:00 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 金融コラム

【QUICK Money World 荒木 朋】株式会社が発行する株式を、前もって決めた条件と金額で購入できる権利を「新株予約権」と呼びます。新株予約権の種類には「社外向け発行」や「無償割当」、「有利発行」、「ストックオプション」などがあります。本記事では、新株予約権の概要や種類、その種類ごとの特徴、発行方法、新株予約権の企業側や引受側(新株予約権者)のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

■新株予約権とは?

新株予約権は、新株予約権を発行した株式会社に対して権利を行使することによって、その株式会社の株式をあらかじめ決められた条件と金額で受け取ることができる権利のことです。新株予約権の所有者(新株予約権者)は、その権利を行使し、一定の価格(権利行使価格)を払い込むことで、会社自身が保有する株式や会社が新たに発行した株式(新株)を取得することができます。

新株予約権は主に資金調達を目的に発行されるほか、敵対的な企業買収に対する防衛策の一環として利用されることもあります。また、役員や従業員向けのストックオプション制度導入の際にも新株予約権は活用されます。

■新株予約権の種類を解説!

新株予約権は社外向けおよび社内向けに大別でき、社外向けとして「社外向け発行」、「無償割当」、「有利発行」の3種類、社内向けでは「ストックオプション」の合計4種類に分けられます。それぞれの内容および特徴を確認しましょう。

 

【社外向け発行】

社外の投資家などに向けて発行する新株予約権を「社外向け発行」と呼びます。募集方法としては、既存株主に割り当てる株主割当、既存の株主に特定せず広く募集する第三者割当の2種類があります。社外向け発行は主に資金調達をするのが目的で、新株予約権を発行することによって企業はオプション料が得られ、新株予約権者によって権利行使されれば資金調達が実現します。また、協力関係にある第三者や企業に新株予約権を発行することにより、安定株主を増やしたり、発行株式数を多くしたりすることで、敵対的買収への防止策に繋がるとも考えられています。

【無償割当】

既存株主に対して、所有している株式比率に応じて新株予約権を無償で割り当てることを「無償割当」と呼びます。大規模な増資を行う際に無償割当を実施する企業が多いようです。大規模増資で新株式が増加すると、現在発行されている株式が希薄化してしまい、株価が下落する可能性があります。既存株主にとっては株式価値の希薄化で不利益を被るため、既存株主の大きな反感を買う可能性があります。このような事態を防ぐのを目的に、既存株主に無償割当を行うのです。

【有利発行】

既存株主以外の第三者に対して、現在の株価に対して有利(割安)な価格を設定して、新株予約権を発行することを「有利発行」と呼びます。株式会社が新たな株主を募る際に発行されるケースが多くみられます。もっとも、有利発行を実施して新株予約権を発行すると、権利行使により既存株主の株式持ち分は希薄化されて価値が下がってしまうことになります。そのため、有利発行を行う際には株主総会による特別決議が必要となります。

【ストックオプション】

株式会社の従業員や役員などの社内向けに発行する新株予約権を「ストックオプション」と呼びます。従業員や役員が権利を行使できる期間内に、事前に決められた価格で会社の株式(自社株)を購入できる権利を付与するもので、その価格は一般的に現在の株価より低く設定されています。権利行使可能な時期を数年後に設定することなどにより、業績を拡大させて株価を上げれば権利行使により多額の報酬を手にすることができるため、従業員や役員のモチベーション向上に役立ちます。ストックオプションの付与は、一般的には発行する企業に在籍していることが条件になります。

ストックオプション制度を導入する上場企業の割合

東京証券取引所作成の「コーポレート・ガバナンス白書2021」よりデータ抜粋(2020年時点)

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■新株予約権の発行方法は?

新株予約権には「公正発行」と「有利発行」の2つの発行方法があります。それぞれの発行方法について説明します。

公正発行は、新株予約権を含む株式をすべての株主に対して公正な価格で発行する方法のことをいいます。先に新株予約権の種類について説明しましたが、このうち、社外向け発行、無償割当、ストックオプションが公正発行に該当します。公正発行を実施する際、原則として、株式公開会社は取締役会による決議、非公開会社の場合は株主総会の決議が必要となります。

有利発行は、第三者や特定の株主に対して妥当と考えられるよりも有利(割安)な価格で新株予約権を発行する方法のことで、新株予約権の種類では文字通り有利発行が該当します。妥当と考えられる価格との乖離幅は10%程度が目安とされています。先に説明した通り、有利発行は株主総会による特別決議が必要になります。有利発行を実施すると既存株式の希薄化が生じてしまい、既存の株主が不利益を被る可能性が高いため、株主総会での承認を得る必要があるのです。

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■新株予約権のメリットとは?

新株予約権を発行するメリットはどのようなものがあるでしょうか。新株予約権を発行する会社側および新株予約権者それぞれの立場でみてみます。

新株予約権を発行する株式会社にとっては、資金調達の手段・機会が増えることがメリットのひとつです。株式発行による資金調達は返済義務がありません。銀行借り入れのように利息も発生しないため、安心安全かつ効率的な資金調達が可能になる点は大きなメリットといえるでしょう。

企業にとっては敵対的買収への対策というメリットもあります。前述の通り、協力関係にある第三者や友好的な企業などに新株予約権を発行することで、自社の株式を安定して保有してもらえる株主を増やすことが可能になります。また、発行株式数を多くすることで敵対的な買収を目論む企業・投資家の保有比率を少なくすることができるという利点もあります。

ストックオプションを付与することで、キャッシュアウトを伴わない報酬の権利を従業員に与えることができる点もメリットです。将来的な株式保有につながるため、経営陣の経営目標に対して、同じ目線で立つ従業員の高いモチベーションが維持されることも期待できるでしょう。

新株予約権は、一般的には現在の株価水準に比べて安い価格で発行されるケースがほとんどです。新株予約権者にとっては、通常より割安な水準で株式を購入できるメリットがあるというわけです。購入時よりも高い価格で売却すれば利益を得ることができますが、市場価格よりも割安な水準で株式を手に入れることができれば、それだけ利益を生み出しやすくなり、新株予約権者にとっては大きな魅力になるでしょう。

新株予約権を付与された新株予約権者にとっては低リスクの取引ができるというメリットもあります。新株予約権者は、同権利の行使期間内であればいつでも権利行使が可能です。株価が新株予約権の行使価格を上回っていれば、予約権を行使しその株式を売却すれば確実に利益を得ることができます。売りに出すタイミングが見分けやすいため、リスクの小さい取引ができるというわけです。

 

■新株予約権のデメリットは?

新株予約権を発行する際のデメリットはどのようなケースがあるでしょうか。

企業側にとってデメリットとなるのは、新株予約権が行使されずに想定した資金調達が得られない場合が考えられます。新株予約権の行使はあくまでも新株予約権者の判断に委ねられています。そのため、株価が権利行使価格に比べて上がらなかったり、もしくは低迷したりした場合、新株予約権者が権利行使せずに、最終的に新株予約権が失効する可能性もあります。そうなれば、予定していた資金調達ができなくなってしまいます。

新株予約権者にとっては、新株予約権を手にする際、通常の株式購入ではかからないオプション料が発生するのがデメリットです。新株予約権で有利な価格で株式を購入できても、その後の株価の水準次第ではオプション料によって相殺される可能性もあるので注意が必要です。

新株予約権を発行した後の株価水準は企業にとっても新株予約権者にとっても注視する必要があります。新株予約権の行使によって発行済み株式数が増えると株式の希薄化が起こります。株式の希薄化は一般的には株価の下落要因になります。新株予約権は市場価格が上がったタイミングで権利行使し、その新株を売りに出すと利益が出るため、新株予約権者は株価の上昇時は権利行使をする動機が高まります。言い換えれば、新たに発行される株式が増えて株式の希薄化が急激に進む可能性もあるということです。そうなれば株価急落を招く懸念も広がり、企業の資金調達にも新株予約権者の利益の増減にも影響しかねないのです。

■まとめ

新株予約権は、新株予約権を発行した株式会社に対して権利を行使することによって、その株式会社の株式をあらかじめ決められた条件と金額で受け取ることができる権利のことです。新株予約権の種類には「社外向け発行」や「無償割当」、「有利発行」、「ストックオプション」などがあります。新株予約権は企業側にとって資金調達の機会増加や敵対的買収への対策、新株予約権者にとっては通常より割安な水準で株式を購入できるメリットなどがあります。株式会社で働く従業員の皆さんにとっては新株予約権者になる可能性もあるでしょう。新株予約権の内容や種類を押さえるとともに、自社の状況などについて開示情報をこまめにチェックするといいでしょう。

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著者名

QUICK Money World 荒木 朋

1998年にQUICKに入社。2003年から11年間、日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)で記者職に就く。0609年にNQNニューヨーク支局に駐在。1820年はQUICKロンドン支店に赴任。08年のリーマンショック、20年のBrexitはいずれも現地で取材した。QUICK退社後、ボクシングトレーナーとして働く傍ら、21年から「QUICK Money World」に寄稿。


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