【QUICK Money World 辰巳 華世】物価が上がっている・・・。足元で多くの人が体感していることだと思います。過去20年間、日本経済は「デフレ」で苦しんできましたが、ここにきて物価が上昇しています。「インフレ」が起こると経済や私たちの生活は大きな影響を受けます。今回は特に資産運用でのインフレリスクに着目しながら、インフレが起こる原因から、良いインフレ・悪いインフレについて、そしてインフレ環境下での資産運用について考えてみたいと思います。
■株式投資におけるインフレリスクとは?
物価やサービスの価格が継続して上がっていくことを経済用語で「インフレーション」、「インフレ」と呼び、インフレの影響を受けることを「インフレリスク」と言います。
資産運用には、預金や株式、債券や投資信託などいろいろな種類があります。それぞれリスクとリターンが異なりますが、その他にもインフレに強い金融商品、弱い金融商品という分け方もできます。
預貯金を例に見てみましょう。預貯金は一般的にインフレリスクに弱いと言われています。具体的な数字を入れながら「インフレリスク」を考えてみましょう。
例えば、期間1年で金利が2%の定期預金があったとします。100万円預ければ、1年後には102万円になります。一方、物価が上昇しておりこの時のインフレ率が4%だった場合、1年前に100万円で買えた物が1年後には104万円に値上がりします。
1年間運用して増えた102万円で当時100万円だった車を1年後に買おうと思っても、104万円に値上がりしているので買うことができません。このように、金利によって投資額が増えても、物価がそれ以上に高騰していれば、お金の価値が下がり、結果的に購買力が低下してしまいます。預金金利がインフレ率に負けている状態です。
将来のインフレ率がどれくらいになるかは予測できません。なので、予め利率などが決まって固定されている定期預金などの金融商品はインフレリスクに弱い商品と言うことができます。
一方で、株式投資など有価証券の売買はインフレの影響を受けにくい金融商品と言われています。企業は物価が上昇した分を自社の製品の価格を上げて対応することができ、収益を増やすことができます。なので、物価上昇に連動して株価も上昇する傾向があり、株式などはインフレに強い資産と言われています。
■インフレが起きる原因
では、ここでインフレが起こる原因について見てみましょう。
足元の日本の物価上昇は、世界的なインフレの波が日本にも押し寄せているためです。世界中でインフレが加速しているのです。これは新型コロナウイルス感染拡大に加え、ロシアのウクライナ侵攻が重なり、エネルギー価格などが急騰したことなどが影響しています。下で説明するコストプッシュインフレです。
一般的にインフレが起こる原因にはさまざまなケースがあるので見てみましょう。
コストプッシュインフレ
原価や賃金のコストが上昇し生産コストが上がることで起こるインフレをコストプッシュインフレと呼びます。原材料や資源価格の高騰などによる資源インフレや賃金上昇による賃金インフレなどがあります。供給側の要因によるインフレです。輸入商品の影響などがあり自国内で対策するのが難しいと言われています。原価があがった商品やサービスの値上げで消費者に影響します。
デマンドプルインフレ
ある商品やサービスへの需要が供給より高くなるとデマンドプルインフレが起こります。好景気などで良く物が売れることで需要が供給を超えて物の値段が上がります。需要側の要因によって生じるインフレです。
デバリュエーション
平価切り下げ(へいかきりさげ)とも呼び、その国の通貨の対外価値を下げるために国の為替レートを下方修正することです。通貨価値の下落で輸出商品の価格も下落するので輸出品の価格競争力がアップしますが輸入品の価格上昇を招きます。国内産の商品を買うようになります。
消費税の引き上げ
消費税の引き上げによって商品価格も吊り上げられ、インフレの要因となることもあります。
規制強化など政治関係
政策などの規制強化などは結果としてインフレを招くことがあります。例えば建築規制を強化した結果、その分の家賃上昇などの負担を消費者が負うこととなり住宅の供給が減ってインフレの原因となったりします。また、ある特定の商品に税補助金を出すなどしてその商品の需要が高くなり、供給を上回ってデマンドプルインフレに繋がることもあります。
■インフレは悪なの?良いインフレと悪いインフレとは
インフレは物価が上昇することなので、インフレは良くないと感じている人がいるかもしれません。しかし、決してインフレが悪いというわけではありません。
これまで日本は長年にわたり物やサービスの値段が上がらないデフレに苦しんできました。金融緩和によってデフレ脱却を目指す日銀は2013年1月に消費者物価指数(CPI)の前年比2%上昇を物価安定の目標として設定している様に、一般的に経済成長には緩やかで安定的な物価上昇は望ましいとされています。
インフレは絶対に悪というわけではなく、一般的にインフレには、「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。ここでは、「良いインフレ」、「悪いインフレ」について見てみましょう。
良いインフレ
良いインフレとは、簡単に言うと、景気の拡大を伴うインフレです。
国内の経済状況が良くなることで、消費が活性化し、需要が供給を上回って商品やサービスの価格が上昇します。企業の収益が改善することで、従業員の賃金も上昇しさらに購買力も上がるという良い循環が起こるインフレです。国民全体の生活水準が上がりやすくなります。
一般的に緩やかなインフレは経済にとって良い状態と言われています。ただ、それには、物の値段以上に収入が上がることが大前提となります。
悪いインフレ
悪いインフレとは、物価上昇がうまく循環していかない状態のインフレです。原材料価格の高騰などで物価が上がっているものの企業がその上昇分を十分に価格転嫁できず、収益が悪化している状態。さらに、賃金は上がらないのに、身の回りの商品の物価は上昇し生活を圧迫する悪循環となるインフレです。景気が後退する中で起こるインフレを「スタグフレーション」と言います。
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■持っておきたいインフレに強い資産
さきほど紹介した様に、金融資産にはインフレに強い資産と弱い資産があります。インフレ時代に、持っておきたいインフレに強い資産について確認しましょう。
株などの有価証券
株式などの有価証券はインフレに強い資産です。インフレ時は物価が高騰し、物やサービスを売る企業の販売価格も上がり収益をあげやすくなります。物価上昇と連動して株価も上がりやすいです。
ただ、すべての株式がインフレに強いとは言い切れません。インフレによって業績が下がる可能性もあり、銘柄によって明暗を分ける部分はあります。なので、しっかりと銘柄選定をする必要はあります。株式投資は、ある程度の勉強が必須で知識が必要ですが、投資先の企業価値が増大するようなら配当金や株主優待が期待されるほか、業績などが株式の評価につながれば値上がり益など恩恵を受けることができます。
不動産などの現物資産
インフレ時は現物資産の価値が上がりやすいため不動産などもおすすめです。物価が上昇するインフレでは、多少タイムラグはありますが家賃なども上昇していきます。アパート経営やマンション経営は、インフレ時に物価上昇と連動して家賃収入が上がる傾向があります。
外貨建て資産
全ての資産を日本円で持つよりも、分散投資の意味でも一部を外貨建資産で持つことで、外国為替やインフレの影響を軽減することができます。
日本円の価値が低下している場合には、外貨建資産などもインフレに強くなります。
■覚えておきたいインフレに弱い資産
一方、インフレに弱い資産もあります。インフレに弱い資産も知っておくと対策になるので見てみましょう。
現金や預金
現金は物価が上がっても、100万円は100万円のままで価値は上がらないためインフレ時には弱いです。インフレでは100万円だったものが例えば1年後には105万円に値上がっているので、相対的に現金の価値は下がっていきます。
ただし、現金は使いたい時にすぐに使えるという強みもあります。
保険や年金
保険や年金も、現金と同様インフレには弱いです。一般的に保険や年金は将来的に受け取る金額を予め決めることになるため、長期的なインフレが起きた場合には弱いとされています。ただ、保険は、万が一何かあった際にまとまった大きな額がもらえる契約のものもあり、物価上昇率よりもらえる保険金の方が多くなることもあるため一概に損とは言えません。契約内容によります。
国債や社債
国債や社債は予め利率が決まっています。満期になったら元本は返ってきますが、満期を迎える頃、利率以上に物価が上昇している可能性もあります。なお、通常の固定利付国債は利率があらかじめ決められていますが、物価連動国債は元金が物価の動向に連動して増減します。
(参考記事) |
■株式投資はインフレリスクに強い
日本は過去20年以上、長期にわたりデフレ環境で過ごしてきましたが、足元で物価上昇を感じるように状況が大きく変わりつつあります。現在の日本ではインフレリスクへの対策をした方が良いです。
インフレ時代では、資産を現金で持っているとリスクが高まります。物価上昇と連動する形で資産運用する必要があります。株式投資はインフレリスクへの対策と成り得るのでおすすめです。
初心者が株式投資を始めるなら、まずは1〜10万円程度で始められる少額投資から始めてみるのがおすすめです。株式投資について勉強しながら知識と経験を積みながら徐々に投資額を増やしてみると良いでしょう。税制メリットがあるNISA(少額投資非課税制度)やイデコ(iDeCO、個人型確定拠出年金)などを積極的に活用してみましょう。
(参考記事)
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■まとめ
物価があがるインフレの影響を受けることをインフレリスクと言います。インフレ時代には、物価上昇に負けない資産運用をすることが大切です。インフレに強い投資をして資産を守りましょう。
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