米株式相場は軟調な展開が続いている。22日までの1週間のS&P500種株価指数は前週比2.9%安。ナスダック総合株価指数は3.6%下げた。いずれも3週連続の下落。週間ベースで3月以来の弱い相場だった。ダウ工業株30種平均は前週比1.9%安。CNBCは、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の米国債利回りの大幅上昇が株価を圧迫したと伝えた。米連邦議会がつなぎ予算を可決できず、新会計年度が始まる10月1日から政府機関の一部閉鎖に陥るリスクが高まったことも影響したと解説した。24日朝の3大ネットワークTVの報道番組は、いずれも政府閉鎖の可能性をトップで詳しく伝えた。
米連邦準備理事会(FRB)の金利政策と政府機関の閉鎖に加え、投資家が警戒する短期リスクはまだある。非常に多い。新型コロナウイルスのパンデミック(疾病の世界的流行)で猶予されていた数千万人の学生ローンの支払いが10月から再開。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、1年で最大1000億ドル(約14兆8000億円)が米家計から流出する可能性があり、消費を圧迫しそう。中国経済の低迷は予想以上に根深いかもしれない。拡大した全米自動車労組(UAW)のストライキはインフレ要因になるとの指摘が少なくない。ガソリン価格の高騰は不安を助長する。
昨夜に娘のSUV(多目的スポーツ車)を大学近くのスタンドで満タンにしたら日本円換算で2万3000円を超えた。過去に経験がない1ガロン=7.199ドル。1リットル=282円になる計算だ。1週間前の給油から10%強上がった。カリフォルニア州は高率の税金が影響し全米で最もガソリンが高いとされるが、それにしても上がりすぎだ。全米自動車協会(AAA)によると秋はガソリン価格が下がる傾向があるが、さらに上がるとの不安がよぎる。サウジアラビアとロシアが年末まで原油供給を制限しており、米国の原油相場の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近物は14日に1バレル90ドルを突破した。
著名な原油アナリストであるJPモルガンのアナリスト、マレク氏は、ブルームバーグTVのインタビューで、WTIが100ドルに向かうと予想した。原油生産の新規投資の欠如と石油輸出国機構(OPEC)などの生産制限を背景に、ボラティリティーの高い「スーパーサイクル」になるとの見通しを示した。ゴールドマン・サックスは22日のニュースレターで、12カ月以内に北海ブレント原油が1バレル100ドルに達すると予想した。OPECの供給削減と需要増で来年は80~105ドルで推移するとみている。
原油100ドル超えがFRBの次の試練になる。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこう解説した。ニューヨーク・タイムズ紙も原油高がFRBのインフレとの戦いに影響すると伝えた。パウエルFRB議長の20日のFOMC後の記者会見は原油高に関する質問が相次いだと指摘。エネルギー価格の上昇が来年の経済成長やFRBの金利政策に影響しないか、投資家が警戒していると伝えた。
ワシントン・ポスト紙が24日報じたABCニュースとの最新の共同世論調査のバイデン大統領の支持率はわずか37%。不支持率は56%に達した。経済政策に対する不満が特に大きく、ガソリンとエネルギー価格をめぐる政策は87%が不支持を表明した。2024年大統領選についてCNNやウォール・ストリート・ジャーナル紙の世論調査ではバイデン大統領とトランプ前大統領の支持率はほぼ同率だったが、ワシントン・ポスト紙の調査ではトランプ氏の支持率がバイデン氏を10ポイント上回った。食品とあわせ有権者の日々の生活を圧迫するガソリン価格高騰に対する対策がバイデン氏の支持率回復の鍵の1つになるとみられるが、戦略石油備蓄の多くを既に放出しており、関係が悪化したサウジアラビアとロシアが絡むだけに容易ではない。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。