岸田文雄首相が打ち出した資産運用立国構想は為替にどう影響するか。QUICKと日経ヴェリタスが共同実施した10月の月次調査<外為>では「円相場への影響はない」との見方が63%を占めた。「円安方向に作用」との意見は26%、「円高方向に作用」は4%にとどまった。
資産運用立国構想は家計の金融資産を貯蓄から投資に向かわせることで企業の成長を高め、配当や賃金の上昇につなげる好循環を狙う。2024年1月からの新しい少額投資非課税制度(NISA)や「資産運用特区」などの施策があり為替需給への波及経路も複数ありそうだ。
住友商事グローバルリサーチの鈴木将之氏は投資資金の一部が外貨資産に流れることで「多少は円安に傾く」としたうえで、「(対ドルで5~10円などの)影響を感じるほど円相場が振れるには数十兆円規模が一気に動く必要がある」と指摘。相場インパクトは限られるとみる。
非課税枠が大幅に拡大される新NISAに絞って聞いたところ、やはり円相場には「ほぼ影響はない」が68%。「やや円安に振れる」は30%、「大幅な円安を招く」は1%だった。国際分散投資への理解浸透もあって個人が海外投資意欲を高める可能性があるが、T&Dアセットマネジメントの浪岡宏氏は「情報察知能力や投資への関心が高い層は、すでに始めている」とみる。
政府が資産運用業改革の一環として導入を掲げた資産運用特区についても「円相場への影響は限定的にとどまる」が76%を占めた。「海外マネーを国内市場に呼び込んで円高要因になる」(8%)との回答は「国内マネーの外貨資産運用が増えて円安要因になる」(15%)を下回った。
構想本来の目的である「貯蓄から投資へのシフト」については多少なりとも進むと市場参加者はみている。日銀によると6月末時点の家計の金融資産の約53%は現預金。この割合が今後5年間で減少するとの見方は計72%に上った。
回答者自身が投資する際に魅力的だと思う対象も聞いた。金融商品別では国内株式と海外株式が合わせて80%。国内外の債券を大きく上回った。住友商事グローバルリサーチの鈴木氏は「緩やかでも経済成長が見込まれる中、株式は相対的に大きなリターンが期待できる」と話す。
魅力的な地域(1人2つまで)は米国(79%)と日本(44%)が多く、インド(24%)が続いた。東海東京調査センターの柴田秀樹氏はインドについて「IT(情報技術)産業に強い」点を明るい見通しの理由に挙げた。
調査は10~11日に実施し、金融機関や事業会社の外為市場関係者74人が回答した。
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