【QUICK Money World 辰巳 華世】最近、街中で外国人観光客をよく見かけるようになりましたよね?新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類になって以降、国際航空便の運航数が回復したこともあり訪日外国人(インバウンド)が増えています。株式市場では、インバウンド関連株の物色が進んでいます。今回は、インバウンド関連株とは?という説明から具体的な銘柄に加え、今後のインバウンド関連株の見通しについて紹介します。
■インバウンド関連株とは
インバウンド関連株とは、訪日外国人観光客の増加により消費活動が活発になると業績の恩恵を受ける銘柄のことです。具体的なセクターとしては、空運・陸運、旅行業のほかホテルや百貨店、レジャー・アミューズメント関連や外食や小売りなどです。
インバウンド関連は、新型コロナウイルス感染拡大で最もダメージを受けた分野の一つです。2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したことで、経済活動の正常化が進みインバウンド関連株の回復が期待されています。
■インバウンド関連株が注目される理由
インバウンド関連株が注目される理由は、訪日外国人客数が回復していることによります。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年には3188万人だった訪日外国人客数が、コロナ以降22年には25万人にまで落ち込み、インバウンド関連銘柄は大きな打撃を受けました。
23年5月に日本での新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行したことで、経済が正常化し訪日外国人客数が回復傾向にあります。日本政府観光局(JNTO)が発表した23年10月の訪日外国人客数は251万人と新型コロナウイルス流行前の19年10月の249万人を上回りました。単月で初めてコロナ前の同月の水準を超えました。国別でいまだにコロナ前の水準を回復していない中国人客が回帰すれば、さらなる需要の喚起につながると期待されます。
また、外国為替相場で円が米ドルをはじめ他国通貨に対して安く推移しており、インバウンド消費を後押ししています。外国人観光客の増加による消費活動が増え、インバウンド関連企業の業績の本格的な回復が進んでいます。
(数字データ出典もと)
・国土交通省観光庁 ・日本政府観光局
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■注目のインバウンド株
ここではインバウンド銘柄について紹介します。
<運輸・ホテル>
訪日外国人客の増加に加え、新型コロナが5類になったことで日本人の旅行気運も高まっており鉄道や飛行機、ホテルなど旅行業が急回復しています。行動制限のない夏休みの旅行者数は新型コロナ禍前を上回る勢いがあり、ANAホールディングス(HD)のお盆期間の国内線予約数は2019年を上回りました。
・ANAホールディングス(ANA、9202)
<百貨店>
百貨店はインバウンド消費が売り上げをけん引しています。外国為替相場が円安で推移しいることもあり免税売上高は好調です。高級ブランドのバッグや時計、宝飾品などがよく売れています。
<小売り>
ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスでは、インバウンド需要を再び取り込み始め、化粧品や酒類など高単価な免税品が好調です。新型コロナ対策で時短営業をしていたビックカメラでは、インバウンドの増加で時短営業を終了し、都心部の店舗の営業を通常に戻しました。
<トイレタリー・化粧品>
インバウンド需要に加え、国内ではマスク着用の判断が個人に委ねられる「脱マスク」の流れもあり化粧品が伸びています。資生堂(4911)では、高価格帯の化粧品ブランドが好調。「クレ・ド・ポーボーテ」が大きく伸びたほか、脱マスク需要を見越してリニューアルや新商品の投下を続けている「エリクシール」が好調です。
<ドラッグストア>
インバウンド向けに化粧品や薬品だけでなく、日本のお菓子や食べ物やお土産など幅広い商品を展開しています。外国人観光客向けに免税対応する店舗も多数。ウエルシアホールディングス(3141)は、23年度内に免税店を現状の約2.5倍にあたる1000店に拡大します。免税対応は全店舗の約4割に増えます。
・ウエルシアホールディングス(HD、3141)
<リサイクルショップ>
外国為替市場で日本円が他国通貨に対して円安で推移していることもあり、日本での買い物にお得感が増しています。高額なブランド物や貴金属などを扱うリサイクルショップもインバウンド需要を取り込んでいます。中古品流通大手のコメ兵ホールディングス(HD)は人気商品の中古品だけでなく定番の新品も取り扱っています。コメ兵HDは第1四半期の決算発表時に24年3月期の連結純利益が前期比30%増の48億円になると見通しを上方修正しました。従来予想の40億円から引き上げました。
<レジャー・アミューズメントパーク>
インバウンド効果に加え、5類以降、国内の需要も堅調に推移。東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランド(OLC、4661)は、23年4~6月期の連結決算で純利益は前年同期比2.3倍の274億円と同期間で過去最高を記録した。開園40周年の効果も後押ししました。
■インバウンド関連株の今後の見通し
政府は、23年3月に23ー25年度の「観光立国推進基本計画」を閣議決定しました。25年までに年間の訪日客総数を19年の3188万人を超える水準とし、年間の総消費額5兆円、一人あたりの消費額は新型コロナ禍前の19年比で約25%増の20万円に引き上げることを目標としています。
日本政府が22年10月に入国に関して水際対策を大幅に緩和して1年が経過し、10月の訪日外国人客数は新型コロナ流行前を初めて上回りました。外国為替相場が円安で推移し、日本への旅行にお得感が高まっていることもあり今後も訪日外国人観光客は増加し、積極的な消費活動が期待されています。政府が25年までとした目標も早ければ今年中に達成する可能性が高まっています。
コロナ禍前の訪日外国人客では、中国人が目立っていましたが、コロナ禍以降は様々な国の外国人観光客が訪れるようになった傾向があります。中国人だけでなく、東南アジアや中東などからの来日も増えています。
また、インバウンド消費の中身が変化する傾向もあります。これまでは、日本に来て買い物をする「モノ」消費が中心でしたが、今後はレジャーや文化や自然を体験する様な「コト」消費へとインバウンド消費の中身が拡大しそうです。引き続きモノ消費も期待されており、これまでの高額商品の購入だけでなく、日用品の需要も高まっています。
こういったインバウンド消費の拡大を受けて企業業績のさらなる回復が期待されます。新たな需要を取り込むインバウンド銘柄は、一段の業績拡大が予想されます。出遅れ感から株価上昇が期待される銘柄もありそうです。
ただ、インバウンド関連は、投資テーマとしての織り込みがすでに進んでいます。高値づかみとならないように注意することが必要で、銘柄の見極めが重要になりそうです。
■まとめ
インバウンド関連株とは、訪日外国人観光客の増加で消費活動が活発になると業績の恩恵を受ける銘柄のことです。具体的なセクターとしては、空運・陸運、旅行業のほかホテルや百貨店、レジャー・アミューズメント関連や外食や小売りなどです。増加する訪日外国人客の需要を取り込むインバウンド関連株を探してみましょう。
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