11月28日、ブラックロック・ジャパンの海外先進国債券を投資対象とする上場投資信託(ETF)が東京証券取引所に上場した。新規設定したのは、米国債券ETF4本とフランス国債ETF1本で、フランス国債ETFのみ為替ヘッジをする(図表参照)。「iシェアーズ」シリーズのラインアップを拡充し、個人投資家の資産形成の基盤づくりに貢献することが設定の狙いだ。同社のETF事業部長の越前谷道平氏に、外国債券ETF設定の背景と活用方法などについて聞いた。
■外国債券の利回り上昇で資産分散効果が復活
――世界の債券ETFの動向を教えてください。
「世界の債券ETFの残高は2017年に残高1兆ドルを突破し、23年半ばに2兆ドルに達した。30年には5兆ドルの規模まで拡大すると予想している。債券ETFの最大のメリットは、複数の債券で運用するポートフォリオを、少額の投資金額で即時取引できること。その透明性や流動性の高さから、投資家が債券に投資するための有効なツールとして注目が集まっている」
「現在は低金利・低インフレから高金利・高インフレの時代への転換期で、外国債券の利回り上昇で投資妙味が戻ってきた。低金利の時期に債券でインカムを狙う場合、低格付け債(ハイイールド債)などに投資する必要があり、株式との相関が高くなって資産分散効果があまりなかった。現在は信用力の高い外国債券でも十分インカムを得られるため、米国株式などに一極集中する投資家にこそ資産分散のためのツールとして活用してほしい」
――今回の外国債券ETF設定の狙いはなんですか。
「現在は米国短期国債でも約5%の利回りを得られるため、債券は株式ほどリスクを取らずにインカムを得られる有効な投資先になっている。また、今回設定する米国債券ETF4本は為替ヘッジをしない。外国債券ETFは機関投資家に多く保有されており、資産の構成要素のひとつとして為替リスクを排除したいとの要望が多かったため、今までは為替ヘッジをするETFをラインアップしてきたという背景がある。一方、個人投資家からは為替ヘッジをしないETFが好まれる。個人投資家からの資金流入が増えてきたことを受け、ニーズに応えるべく為替ヘッジをしない外国債券ETFのラインアップを拡充した」
「今後の為替相場が的確に予想できないからこそ、為替ヘッジをするETFだけではなく、為替ヘッジをしないETFも必要となる。相場環境や投資スタイルにあわせて、投資家が為替ヘッジの有無を選べたり、入れ替えたりできるようラインアップを揃えておくことが、東証の外国債券ETFの残高シェア50%ほどを占める当社の責務と考えている」
■リスク低減・投資の第一歩に外国債券ETFの活用を
――個人投資家は外国債券ETFをどのように活用すればよいですか。
「今回新規設定した5本は、新しい少額投資非課税制度(NISA)の成長投資枠対象商品として届け出る予定だ。全世界株式や米国株式に投資する商品が人気だが、中長期での資産形成を目指すのなら、株式とは異なった値動きをする債券ETFをポートフォリオに組み入れ、リスク低減を図りつつリターンの獲得に取り組んだほうがよい」
「外国債券ETFは、ある程度投資経験のある投資家がポートフォリオの一部に組み入れることが多いが、投資初心者にこそ活用してほしい。株式ほど値動きせず安定したインカムを受け取れるため、預貯金しか保有経験のない投資初心者が資産形成の第一歩を踏み出すのに最適な商品だといえる」