【日経QUICKニュース(NQN)】QUICK ESG研究所は30日、国内の機関投資家を対象とした「ESG投資実態調査2023」を発表した。日本株など運用資産全体でESG(環境・社会・企業統治)投資の占める割合が「90%以上」になるとの回答は現在で33%だが、5年後にこの割合を「増やす」としたのが46%と過半に迫った。ESG投資をめぐっては、米国では「グリーンウオッシュ(見せかけだけの環境対応)」批判などで風当たりが強まっているが、国内は高い関心が続いている。
調査は毎年実施しており、今回で5回目となる。国内に拠点を置く機関投資家を対象に2023年8月21日~10月10日に実施し、73組織から回答を得た。ESG投資割合の引き上げ理由では「経営トップによるコミットメント」が50%と最も多く、ESG要因を企業分析や投資の意思決定に組み込む「ESGインテグレーションの強化」が43%と続いた。「リターンの獲得」は29%にとどまった。
ESG投資の手法をめぐっては「ESGインテグレーション」が90%と最多だった。次いで投資先の企業と直接対話する「エンゲージメント(対話)」が84%、株主総会での「議決権行使」が76%となり、21年の調査以降はこの3手法が上位を占めている。
23年3月期からは有価証券報告書で人的資本や多様性を含めた「サステナビリティ情報」の開示が義務付けられた。開示されたサステナビリティ情報を「活用している」と回答した会社は85%だった。活用方法は「対話を実施する際の資料」が77%と首位となり、「投資対象企業を選別する際の社内評価指標」の40%を大きく上回った。投資先企業との対話時にサステナビリティ情報が積極的に活用されているようだ。
機関投資家がESGに関して対話を実施した投資先企業数は「50社以上100社未満」が最多だった。対話時に重視するテーマでは「気候変動」を挙げる会社が91%と最も多かった。多様な人材を確保・育成する「ダイバーシティ&インクルージョン」も72%と続き、上位は前回調査と同様の順位となった。「労働慣行(健康と安全)」は41%と前回調査(31%)から上昇が目立ち、ESG研究所は「昨今の人手不足や働き方改革の観点から注目が集まった」と分析している。
<関連情報>
・ESG投資実態調査2023(要約版)はこちら
[QUICK ESG研究所] https://corporate.quick.co.jp/esg/